4月初旬、春の青春18きっぷの期限が迫っていた。何とか使い切ろうと、ダメもとで選んだのが烏山の「アルバトロス」。
栃木県那須烏山市南2-3-4
閉店
ここに行くのは一つの賭け。
烏山は宇都宮から烏山線に乗るんだけど、電車の本数がとても少ない。「やってませんでした。では、また」って気軽に出直せる場所ではなかった。
しかし営業してるかどうかを知るするすべがない!
いつだったか電話したら「現在使われておりません」になってて、営業時間や定休日の情報もなし。
数年前こちらに行ったことがある友人に聞いてみたら、「現在使われておりません」の状況に対して、「あ~そうかもね。そういう感じの店だよ」と言ってた。そういう感じの店? 電話繋がらないは仕様(^_^;)? とりあえず土曜日の午後に入った、という大ざっぱな情報を頼りに、早すぎず遅すぎずの時間を狙って、13時22分烏山駅到着。
店名が建物に直!
窓枠の造形がなんか凄い!
くすんでるのにカラフルなモザイクの石壁が渋い!
でも…看板が傾いてる? イヤな予感。
良かった、大丈夫! 季節外れのクリスマスの飾りに紛れて、「営業中」の札。
中からは凄い音量でガンガンに音楽が聞こえてくる(松田聖子)。
やったね! ダメもとで来て良かった。この段階で身震いするほど嬉しい。
だけどね…。ドアがなかなか開かなく、しばらくドアノブとガチャガチャ格闘し、ふん!と思いっきり力を入れたら開いたけど、ドアに付いてたクリスマス飾り(?)の鈴がポロンと取れてしまった。
ところが、そんなドタバタ劇も、中まで届かなかったようで…。高齢の男性マスターがテーブル席でタバコを吸いながらコーヒーを飲んでいた。
言葉もない!
ただただ凄いとしか言いようがない。素敵とかそんなありふれた言葉では語りたくないけど、ここは敢えて言おう。とても素敵な空間!
雑然とはしてる。でも汚くはない。そう、これはアートなのだ。
来て良かった。やっぱり素敵…と言ってしまう。何度でも。外観も凄いけど、店内も負けず劣らずだね。それどころか、何十倍にも返ってくる。
ラジカセから延々と音楽が大音量で流れている。
「耳が悪いから音を大きくして聞いてる」のだそう(^_^;)。
「コーヒーでいい?」
この問い(笑)。もう、古い喫茶店で何度も聞いてるよ。コーヒーにして欲しい、というか、コーヒーしかないんでしょう(^_^;)?
コーヒーは益子焼のカップにて登場。
ちなみに、入口に使ってる「くすんでるのにカラフルなモザイクの石壁」も益子焼なんだって。さすが栃木。
なぜかマスターが私の向かいに座る(笑)。しかも自分用のコーヒーまで持ってきてるよ。
「このコーヒーはジャマイカ。もし東京で飲むならジャマイカがいいよ」
ジャマイカって、どんな味だっけ?
おそらく人生初のジャマイカは薄いが飲みやすく、私好みの味だった。その後も何度から薬缶からコーヒーを注ぎ足しされた。
マスターは80代。若い頃は横浜の伊勢佐木町のナイトクラブでバーテンをしていた。「当時の給料は~」、「働いてた女の子は~」など尽きることなくマスターの話は続いた。席を立つタイミングが……。
ピンブローチ2個渡された。
「これを見て、ウチのことを思い出してね」
インドを旅行したとき買ったそうだが、シャネル? 本物?(接着剤が付いてたので違うと思う)
なかなかサービス精神旺盛のマスターだが、お会計はしっかり800円。そこそこします(-_-;)。
後から写真を見ると、ジャマイカは700円だった。
あれから3カ月経ち、季節も春から夏に変わった。4連休中にふとあの日の事を思い出した。マスターからは何度も「『山あげ祭』が凄いから来て欲しい」と力説されてたんだよね。私はここで初めてその祭の存在を知ったが、「山あげ祭」はユネスコ無形文化遺産に指定されており、那須烏山の町を挙げての大規模な祭りらしい。今年は7月24~26日に開催予定で、丁度その時期だったのだ。
あの時は話を切り上げるために、「行きますね」と軽く流してたけど、案の定、新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止になっていた。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
コメント
ぽぽ
この台詞
…素敵ですね
2020/08/18 URL 編集
エムケイ
2020/08/21 URL 編集
通りすがり
この喫茶店は映画『僕たちと駐在さんの700日戦争』のロケに使われた所です。
2021/03/01 URL 編集
エムケイ
知りませんでした。軽くネットで調べてみたところ、アルバトロスだけでなく、町のあちこちでロケが行われていたようですね。
教えていただいて、ありがとうございます。
2021/03/02 URL 編集