どこか哀愁を帯びていた。
剥落しかけ風雨で変色した店舗上部、カーテンが覗く寂しげな窓辺。この手の外観に私は大きく心が揺り動かされる。
南橋本西口から徒歩2~3分。駅前だが人通りの少ない通りに、かの純喫茶はあった。
神奈川県相模原市中央区南橋本2-6-16
南橋本という駅をご存知だろうか?
JR相模線の駅で、橋本の一つ隣。この相模線というのが、ローカル。ドアには開閉ボタンが付いていて、乗り降りする際は、それを押すシステム。初めて乗ったときは、知らずに焦った。
西口に出ると、まず目に留まるのが、「としちゃん」なる居酒屋、そして喫茶キャビン。「としちゃん」はともかくとして、キャビンは心惹かれた。でも、近寄ると、暴力団の入店お断りの注意書き。これ、普通の人はかえって怖気づくと思うけど? 事前に教えていただいた、目指す純喫茶が別にあったので、とりあえず今回はスルー。
店側面には手書きの店名。コロンビマと読めてしまうが、正しくはコロンビア。
入口はアール。斜めになったような、少し変形したドア周り。
やっぱりだ! 期待を裏切らない店舗内部。瞬時に遠い彼方に心を持って行かれた。
色で表現するなら、モノクロの空間。
角地になっており、窓からは自然光が差し込むのだが、どことなく薄暗い。
天井に付いた2つのシャンデリアは、電気が消えていた。
動と静。いわゆるゴージャス純喫茶が動なら、こちらは間違いなく静。
純喫茶巡りを始めたばかりの頃は、大好きなのは、一も二もなくギラギラした煌びやかな「動」。もちろん今でもこういう分かりやすい純喫茶は大好きだが、同時に同じくらいこの手の「静」の純喫茶も好きになってきた。
分かりやすいアピールはないものの、よく見ると、ディテールがいちいち凝ってたりする。
流麗な金属のパーテーション。
モノクロ(イメージ)の店内で、ここだけひときわ鮮やかな色彩の造花。
外が寒いし、店内も少し寒い。カウンターの前にストーブがあるので、その近くに座れば暖かいのかもしれないけど、あえてそこから遠く離れた入口近くのパーテーションで隔離され、お店の人から姿が見えない席に座った。
さて、注文。こちらも店名が手書き。
開くと、やはりこちらも手書きのお品書き。フード、ドリンクメニューは一見豊富だが、二重線で消してあるものも多く、実質それほど豊富ではなかった。
長くこのブログを読んでる方は、私の行動パターンをある程度読んでいると思う。
大きく心揺り動かされる、好みの純喫茶に出会うと、時々、普段頼まないようなのを注文する癖がある。
おそらく、当ブログでは初登場。シナモンティーを注文。
紅茶にシナモンパウダーがかかっており、一緒に添えられてたのがシナモンスティック。
「お砂糖は入ってないので、お好みで入れてくださいね」とママさん。
これも普段やらないことだが、珍しく砂糖をたっぷり入れ、シナモンスティックで混ぜた。
外を眺めながら、シナモンティーをゆっくり飲む。ストーブの薬缶が湯気をシューシュー吹き出す音が聞こえて来た。そして、テレビからは昼ドラも。
飲み終わって、お会計をしようと、テレビを見るママに「ご馳走様」と声をかけるとビックリしてた。
「歳を取ると、こんなのばっかり見ちゃって」
大変気さくでお茶目なママさんだった。店内の写真を撮りたいと言ったら、大変喜んでいただいた。
「私も旅行では写真を撮ってね」飛騨高山に行ったときに写ルンですで写真を撮ったのだという。それを額に入れて飾ったのが、「あれ」と指さす。「素人丸出しでしょ?上がボケちゃってね」
とは言うものの、かなり小さな写真で、かなり上にあって、あまりよく見えません(笑)。もっと下に飾った方が良いと思います(笑)。
「この絵」
今度はかなり大きな風景画を指した。私もかなり気になっていた絵だ。
「私が旅行で撮った写真をお客さんに渡したら、それを見て描いてくれたの。何億もの高い絵よりも、私にとってはずっとずっと大切な絵なの」
ニコニコと話してくれた。
「私は暖かい場所が好きなの」
「純喫茶コロンビア」と文字の入ったマッチをたくさん(!)くれたのだが、そこには南国の絵。
ここでコロンビアという店名の由来を伺った。ブラジル、モカ等。コーヒー豆の店名の純喫茶は多い。コーヒーに強いこだわりがあるんだ、きっと、と思っていると、、、
「コロンビアはコーヒー豆が出来るくらいだから、暖かいんだろうな、と思って。私、暖かい場所が好きなのよ」
なんともユルい。
営業時間について。「但し1時から5時まで昼休み」という但し書き。
こちらのお店を教えてくれた方は、何度も空振りをした結果、この営業時間のカラクリを知ったらしい(私の場合で言うと、中屋洋菓子店)。本当に、大変貴重な情報ありがとうございました。
珈琲専科 コロンビア マッチ (2014年)
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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