たまに旅先で、深い余韻を残す純喫茶に出遭うことがある。東京に戻ってもなお何度も何度も反芻するような…。
今回の大阪旅行では、松虫駅前の「ゆうなぎ」がそうだった。
松虫という変わった名前には由来があるらしく、ここでは説明を省略するが、阪堺電車上町線の駅である。松虫駅で降りると、「喫茶・軽食ゆうなぎ」と書かれた屋根がホームから見える。
大阪府大阪市阿倍野区松虫通1-1-2
線路沿いの風景が、昭和30年代頃の映画のようだ。
はやる気を抑え、踏切を渡る。
リアルにこんなワンシーンなかった? モノクロ映画をカラーで観ているような気分。
いつの間にか、私がその映画の登場人物になって、それを俯瞰で見ているような不思議な感覚。
映画『夕凪』とか…ね。なんだか悲恋物っぽいけど。
椅子が大変美しい。自然光がさしこみ、映える色合い。
海岸地方で、夕方になると、陸風と海風が交替し無風になることを夕凪というらしい。もしかしたら、夕凪の時、海に沈む夕日がこんな色だったりして。
そんな意味があるのかないのか、海のように青い、おしぼりトレイに、灰皿。しかもお塩の蓋まで。これ、ひょっとしたら、アジシオでは?(笑)
クリームコーラ。大阪名物かしら? たんなる好奇心で注文したら、出てきたのはコーラフロートだった。
大阪ではコーラフロートではなく、クリームコーラなんですね。
メニューを見返すと、クリームソーダ、クリームコーラ、クリームコーヒー。
納得!
東京では飲み物にアイスクリームを浮かべた飲み物を「○○フロート」、ソーダだけ例外的にクリームソーダと呼び、それが当たり前だと思っていた。でも、すべてを「クリーム○○」と呼ぶ方が理にかなっている。
路面電車が走るのをときおり窓から眺めながら、この日の計画を立てた。せっかくだから、この後行く西田辺で、大阪市内の地図を買おう、とか考えつつ、手帖にメモ。
「……関東では気温が上がらず過ごしやすいですが、関西では30度以上になるでしょう」
ふいに、テレビからニュースが流れる。
やっぱり? 家を出たときは早朝とはいえ、すいぶんと涼しかったが、大阪に着いた途端、暑い、と思ったんだった。気のせいではなかったんですね。
店の奥で、こんな情熱的な詩を見つけた。
悪魔のように黒く
地獄のように熱く
天使のように優しく
恋のように甘い
これがコーヒーだ
どうぞこの黒い悪魔をかわいがって下さい
読んでるうちに、照れてきた。(^^;
次はここで誰かと待ち合わせをしてみたい。
ゆうなぎでなら、待ちぼうけしてもいいかも、と思ってみたり。
お店のマッチの代わりに、もらったマッチが思いのほか可愛かった。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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