京阪神の陰になり、あまり日の目を見ない和歌山。だが、そこは個性的な珠玉店が集う、純喫茶の宝庫であった。
早くも2軒目で、とどめを刺されてしまった。
和歌山おそるべし。
和歌山県和歌山市雑賀町133
「Coffee 浜」
小波に続き、和歌山らしい、海を連想させる店名。
外観からして完成度が高いが、実際に入ってみても想像を裏切らない、いや想像を軽く飛び越える、素敵な内装だった。
はめ殺しの窓は、私の大好きなガラスブロック。と、船の操舵輪。
個人的なことで申し訳ないが、じっと見ていると、私には操舵輪が人の目に、外の気球の絵の残像と重なり、ルドンの目玉になっていった(飛躍しすぎ?)。美しくも、シュール。
外から想像する倍以上は広い店内。メインのエリアは船底天井になっており、椅子、煉瓦、パーテーション等、凝りに凝りまくった、美しい茶系空間。
どこに座ろう? 目があちこち泳いでしまった。
「お勧めの席はどこですか?」
普段、席は自由に決めたい方だが、ここではどこもかしこも素敵すぎて選べなかった。静かに佇むマスターに尋ねると、
「あちらの窓際の席が人気ですよ。窓から川が眺められるのです」
即決。川が見える窓際の席にしよう。
メニューを求めると、申し訳なさそうな顔で、「これしかないのですが、、、」。視線の先には、砂漠で駱駝に乗った絵。メニューだった。ドリンクのみで、食事やパフェといったものはなし。
アイスコーヒー。
流れている音楽はジャズ。洗練されている店の雰囲気に相応しい。
開け放った窓辺に置いてあるのは、可憐な撫子の鉢植え。私の大好きな花だ。その向こうには川。ゆらゆらと涼しい風が吹き込む。
まるで船の旅をしている気分になった。
この後も怒涛の珠玉ラッシュが続くが、「Coffee 浜」はその中でも出色。いつまでも余韻を残す、素晴らしい純喫茶だった。
さて、ここで和歌山純喫茶事情。
和歌山市は県庁所在地だが、その割には、人通りが少ない。とても需要があるように思えないのに、純喫茶が多いのが不思議だった。
「和歌山は人口比に対して喫茶店数が日本一だったことがある」と浜のマスターは教えてくれた。和歌山に純喫茶が多いのは、その名残だった。
【参考】
(昭和48年) 喫茶店 驚異的な増加 常連さん集う憩いの場 - ニュース和歌山
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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