なんとなく月島へ。
あそこならモーニングやってるんじゃない? パンを扱っている店=モーニング有、と短絡的に連想し、ハンバーガーを看板メニューに掲げる「喫茶パーラー ふるさと」を訪問。
東京都中央区月島1-23-10
もんじゃストリートっていうんだっけ? もんじゃ店がずらりと並ぶ通りを歩く。活気のある下町である。人気店にはそれと一目で分かる行列ができている。熾烈な競争を横目に、人1人通るのがやっとの細いわき道にそれる。
「ババとジジの店」という謎のフレーズ。表にモーニングの案内は出てなかったが、中にはあるのだろうか? 怪しげなオレンジのドアを開け入店。
外のわき道同様、店内も細長いうなぎの寝床状。
狭い店は身の置き所がなく好みではないが、ここは例外。狭い空間に見どころがギュッと詰まっている。
ウロコみたいな模様の壁も素敵だが、使い込まれ年季が滲みでたカウンターにうっとり。
青×白のツートーン丸椅子と赤いラインのカウンターのキッチュさは、色の組み合わせもバッチリだし、場末のバーみたいな純なオーラで満ち溢れていた。
元は緑と思われる床のプレートは所々はがれ、地が剥きだしになってて、頽廃に磨きをかけている。
店名は純和風だが、テイストは“憧れのアメリカ”。ふるさと要素は、カウンターの棚に複数置かれた田舎のおばあちゃん家的なミニチュアだけ。コカコーラやハイネケンのネオンといったアメリカの象徴的なディスプレイの方がよりカラフルで、より目立っていた。
BGMは古めの洋楽。リック・アストリーも流れてきた。ああ、たしかそんな人いたっけ(遠い目)。
紙ナプキン入れのカップもアメリカン。少しわざとらしい気もするが、元来この路線は好みでもあるし、この場にしっくり合っている。
壁沿いに縦一列に並ぶ椅子とテーブルだけは、新しくそっけないもので、違和感があった。
さて、内装の描写はこのくらいにして、注文を。
ハンバーガー、ホットドック、オニオンリング、フレンチフライ、ハイネケン、コーラ、ジンジャーエール等、アメリカ映画で典型的な脇役のでっぷりとしたオヤジが、テレビでフットボールを見ながら食べるメニューは充分揃っている。モーニングセットはなかった。
聞いてみればあるのかもしれないが、モーニングというのはお店のサービスの意味合いもあるので、客自らは求めずらい。
うーーん。
朝から何も食べてないのでお腹は空いているが、ハンバーガーは厳しい。以前に一度食べたことがある。朝には重いし、値段もそこそこするので、テーブルに置いてある一押しらしき、いちごジュースにしてみた。
出てきたのはピンク色。味は想像とは違って、イチゴジュースというより、イチゴシェークに近い。美味しかったけど。
「どうぞ」
余ったイチゴジュースをコップでサービス。
笑顔のママさん。黙ってるとおっかなそうに見えたが、違った。
思わず気が緩み、今更注文するわけではないが、気になったので、モーニングがあるのか聞いてみた。
「たいしたものではありませんが、ありますよ。トーストとか・・・」
そうなんだ! 常連さんにサービスで出す裏メニューのようなものだろうか。さすがにこれ以上は聞けず。ただこの後、月島で2軒の喫茶店に入ったが、いずれにもモーニングはなく、常連さんらしきお客さんに黙ってスッとコーヒーとトーストを出してるシーンを目撃したので、あながち外れてはいない気がする。月島の純喫茶モーニング事情を勝手に推測。
卵みたいなライト。
興味深々で写真を撮っていると、その後ろにあるものを示し、「これはクジラの髭なんですよ」と教えてくれた。
*
「店内は50年間何も変えてません」とママさん。
え、でも……。
言いたいことがここまで出かかってる。
「テーブルと椅子だけは新しくしましたが」
……。
だよね? だよね? そうだよね? やっぱりそう思った(^^; いずれにせよ今では希少となった、昔ながらを保った珠玉店である。
残念なことに、この場での営業もそう長くはないという。
この一帯には再開発の計画があり、マンションになってしまう。正確にいつまでか分からないが、今年いっぱいらしい。閉店ではなく、移転の予定だという。
この奇跡のような昭和の風景も近いうちに失われてしまう。
興味のある方はお早目に。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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コメント
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2022/07/02 編集