日曜日の夕方。刻一刻と帰りの時間が近づく。
心地良い疲れと共に、甘美な余韻に浸りたい。名古屋で最後を迎える喫茶店をどこにするか?
日が暮れかけていく中、円頓寺商店街に向かった。
愛知県名古屋市西区那古野1-35-14
「自家焙煎の店 喫茶 まつば」
入り口なのか出口なのか、円頓寺商店街の端っこにその喫茶店はあった。少し引っ込んだ場所にあり、ひっそりとしていた。
想像してたより奥行きのある店内の中央には、電話ボックスがあった。
これは!?
電話の受話器。純喫茶店内の電話ボックスは珍しくないが、こんなのは初めて。
奥の席だけスポットライト。
見上げると、天窓から光が降り注いでいた。
色味を抑えた内装は殺風景に見えたが、壁には所々センスの良い絵が飾ってあった。
盆栽もあったり。
自家焙煎コーヒーの店だが、この日のコーヒー許容量に達していため、ミックスジュースを求む。
だが、バナナがないからとのことで、リンゴジュースに。
*
おそらく私がこの日の最後の客なのだろう。
お客さんとお店の方の会話が丁度良いBGMだったが、先客が帰った途端、店内はシーンと静まり返った。落ち着かない気分になった。
帰りの新幹線まで時間があったため、もう一軒どこか行こうと考え、お会計をする。
このまま黙って帰れば、ごく普通の喫茶店で終わる。ところが、実はかなり歴史がある喫茶店だった。マッチを所望したことがキッカケにママさんからお話が訊けた。
*
創業は昭和8年。82年になるという。
(失礼ながらそこまで古い店には見えなかった)
栄に小倉トースト(あんトースト)発祥の店「満つ葉 本店」があり、そこで修業した先代が興した喫茶店。現在のマスターは2代目として56年目。
元は本店同様漢字で「満つ葉」だったが、若い人は読めないだろうと、30年前に建物を建て直した際、「まつば」と平仮名表記に改めたのだという。
ママさんは大変気さくな方で、お店を出た後、近くの古い建物が並ぶ情緒のある街並みを案内してくれた。喫茶店ばかりの名古屋旅行が少しだけ人間味のあるものになった。
まつば マッチ (2015年10月)
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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コメント
カカポ
電話ボックス...仕切りの鉢植え...。純喫茶とは、ゆとり、なんだなぁ。いつも色々なことに気付かされます。エムケイさん、ありがとう💖古い街並みもいいですね。資料館じゃなく、今生活の中にあるって言うのが大事だと思いました🎏
2016/05/02 URL 編集
あかりのまま
歴史のあるお店なんですね。小倉トーストは名物なんでしょうか
2016/05/02 URL 編集
エムケイ
内装の好みは人それぞれですが、広い店を嫌いという人はいない。
純喫茶のコーヒー代は、コーヒーへの対価というより、空間への対価だと思っています。
>資料館じゃなく、今生活の中にある
これは私もそう思います。
2016/05/04 URL 編集
エムケイ
あんまりアピールし過ぎる喫茶店も苦手なので、since19○○とか、有名人の誰々が来たとか、テレビに出たとか貼り紙がベタベタされてるとゲンナリします。
こういう形で知るのが理想です。
小倉トーストに関してはちゃんと聞いてません(笑)。
どうなんでしょう?
2016/05/04 URL 編集