閉店はどこにも等しく訪れる。
そんなことはとうに分かっていたことであり、ここ最近の閉店ラッシュからすればごく自然な流れだが、今回は少しショック。
新橋「珈琲 バイオレット」が2月末に閉店した、とのこと。
東京都港区新橋1-9-9
※2015年2月末閉店
3年以上前に一度だけ訪問したことがある。土日祝休みのこの店のために有給を取った。
ところが、閉まってるではないか! 14時50分頃。
ええええーーー! ちょっと、ちょっと、ちょっとーーーーー! 一体何のために有給を取ったんだと思っているの? 店の前で思いっきり地団太を踏んだ。とんだ駄々っ子だ。
もちろん他の店のためもあるが、この日一番の目当てがこのバイオレットだった。どうしよう? 先に他行く? それともどうしよう? 一度大通りに出、先に「いまあさ」に行くべきかどうすべきかうろうろし、結局10分後戻ってくると、なんとシャッターが上がっていた!
一転して地獄から天国へ。
部外者に場末などと言われるのは心外かもしれないが、恐れず言えば、まさに場末のバーの雰囲気。
子供の頃、色付きガラスの怪しげな純喫茶を見かけると、中はどうなってるんだろう? むやみやたら妄想したものだが、その妄想上の純喫茶のイメージはまさにこんな感じ。暗く退廃的な内装だった。
ドキドキしながら入口付近の席に座ると、「そこだと寒いでしょ? こちらの席に座りなさいよ」奥の席へ促された。江戸っ子口調のハキハキしたマダムの有無言わさぬ雰囲気に従い、カウンターの近くに移動。
一見客(主に純喫茶巡りの客)は、決まって入口付近に座りたがるのだという。
「きっとそこから写真を撮りたいからよ」
みなさん見透かされてますよ! あまりにもドンピシャなので驚いた! このマダムには隠し事はできないな、そう思い、こちらの来意を告げた。
「やっぱりね。こんな古い店だけど、今だと珍しいみたいね」
「こんなのも珍しいみたい」
長年使いこんだタンク(中は水?)
機関車の物入れ。蓋をパカッと開けると中に入れられる。
メニューは値段の修正、消されたもので継ぎはぎだらけだが、さらに一言。
「珈琲と紅茶、ミルクしかできない」
いやいや、ハッキリしてて気持ちが良い。
コントラストはばっちり。白いミルクのカップ、真っ赤なシュガーポット。
「最近、マッチが出て来てね」
新旧2色のマッチをいただいた。店名そのまま、バイオレット。
昔は夜遅くまで営業していて、それでもお客さんが次から次で忙しかった、近所の会社へコーヒーの出前もあって、でも今ではほとんど常連のお客さんとたまに私のような純喫茶巡りの一見客が来る程度なのだと話してくれた。1人でやってるので用事があると店を閉めて出掛けることもあると教えてくれた。
『散歩の達人』にも掲載されたらしく本人の写真入り。年齢も載っていたが、自分の両親よりもずっと年上だと知り驚いた。とてもシャキシャキしててお元気だ。
それでもこの立地、現在の純喫茶を取り巻く環境を考えると、いつ閉店してもおかしくない、そうは思っていた。訪問してない人には、「今すぐ行っとけ!」と発破をかけていたが、当の自分といえば、昨年11月やはり有給を取り新橋で純喫茶巡りをし、バイオレットにするかいまあさにするか迷い、結局いまあさに入った。
その3か月後に閉店していたのだった。
(2011年12月14日訪問)
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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コメント
JKS
かっこよくも怪しいロゴやスモークのかかった扉に
正直気後れしましたが、
たった一度だけでもマダムとお話できて本当に良かったです。
古い純喫茶好きの気持ちがよく分からない、
スターバックスのほうが明るく綺麗なのに、
なんておっしゃって笑っておられました。
先日、お店まで行って閉店の旨を告げる貼り紙も見てきました。
もうずっとシャッターは下りたままなんだと思うと寂しいですね…。
2015/03/19 URL 編集
エムケイ
あの怪しいスモークは純喫茶初心者時代ならまず気後れするに充分です。
スタバの方が…はどっかでも聞いたことあります(笑)。
いやいや、スタバどうでもいいから…(笑)。
いずれにしても閉店は寂しいです。
2015/03/19 URL 編集