初めて出会ったのが何年前か、もはや正確には思い出せない。
だが、それ以降ずっと頭の片隅を占めていた純喫茶は、想像を上回る素晴らしい空間だった。
東京都台東区入谷2-39-7
入谷駅から少し離れ、人通りが少ない交差点にある。
「スナック喫茶 白鳥」
年季の入った渋いその姿は、看板のスナック喫茶の肩書と相まって、どこか入りにくくスナッキーな店内を想像させた。
ところが、いざドアを開けるとまさに純! スナッキー要素ゼロ。これぞ純喫茶!
基本茶系だが、単純なのっぺりした茶色ではなく、隠しようのない深みが滲み出ていた。
そして、ゴージャスなシャンデリア。
壁にはどこかで見たことあるようなレトロな形状のライト。
特別目を丸くするようなものはないが、全体的に調和のとれた内装であり、安心安定の純度を誇る。
先客は1人だけで静か。店内はほどほどの広さがあるため、少し離れた奥の窓際にみっちりと収まった。
カーテン越しに柔らかい光が射し込み、店内全体が俯瞰できる特等席。
どんな店も座る席で印象は大きく左右されるが、初・白鳥訪問は良いスタートを切った。
白いカップ&ソーサーで出てきたコーヒーには、1杯分のミルクピッチャーがちょこんと乗っていた。私のためのこの1杯と思うと、なんだか愛しく思える。基本ブラック派だが、その心使いをしかと受け止め、半分ブラックで飲み、残りにミルクを少しづつ足し味の変化を楽しんだ。
音楽は特になく、テレビでNHKのドラマを放送していた。
こちらには大変品のあるマダムがいらっしゃる。素敵な純喫茶には素敵なマダム。
「こちらのお店をブログに載せたいのですが」と言うと、少し慌て少し戸惑い、「いいですよ」と答えてくれた。その控えめな反応がとても印象に残った。
強烈な個性ある純喫茶も大好物だが、こういったオーソドックだが落ち着ける純度の高い空間に身を置き、誇張抜きに心が洗われた。純喫茶巡りを始めたばかりの頃の新鮮な気持ちがふとよみがえった。
小村井駅前にある「越路」も同じタイプ。随分前に訪問したきりだな、あそこも近いうちにまた行こうと思った。
最後に、店名の白鳥だが、「はくちょう」ではなく「しらとり」と読むことを付け加えておきたい。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
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