一発で惚れ込んでしまった。
昭島と拝島のちょうど中間に位置する「茶廊 てんとうむし」。
ファンシーな店名とは真逆で建物はスタイリッシュ。現代アートの美術館を思わせ、シャープで個性的。匂い立つような緑に囲まれている。
東京都昭島市緑町2-29-3
ここまで大雨の中を歩いた。
昭島駅前「プリムローズ」を出た途端、小雨がぽつぽつ降り始め、突如どしゃ降り。日傘をさしてはいたが、雨の勢いは凄まじく、容赦なく打ち付ける。服は濡れ、靴に水が入りヌチャヌチャして気持ち悪い。束の間、灼熱地獄から解放されたのは喜ばしいことだが。
徐々に雨脚が弱くなり、そろそろ止むかと思った、その時、てんとうむしの看板。
てんとうむしが止まってる! いいなぁ こういうのって夢がある。
さすが郊外。駐車場付。
品川の原美術館と雰囲気が似てる。
クリップのような看板がハイクオリティー。ここにてんとうむしが止まっていたら、悶絶必至。
ユルい名前でかなり油断していたが、侮り難し。
アートの匂い漂うエントランス。
紐でくくったコカ・コーラの看板が味わい深し。
重厚な木の扉を開けると、おばあちゃんマダム登場。向かって右がカウンター。その奥に天井が高くガラスに囲まれたアートなスペースが? そっちに進もうとしたが、「こちらへどうぞ」。
左のスペースに案内された。
うわっ! こっちもいい感じ。モダン山小屋。
1つ1つのテーブルは木のパーテーションで区切られ、座席は艶めかしい青のベルベット。
どことなく、電車のコンパートメントのようでもある。
一言で言えば、レトロモダン。古くもあり、新しくもある。こういうのが、時代を経ても色褪せない魅力というのかも。
窓から魅せる、裏手の緑生い茂る林。まるで風景画のようである。
お好みなら、薄暗い席も。ここだけ切り取ると、70年代のジャズ喫茶風。こっそり内緒話はこちらで。
真ん中のスペースは少し趣が異なる。
なんと! 樽がテーブル! コーヒー豆を敷き詰めている。わーー!!! 素敵、素敵、素敵。どこから、こういう発想が? 感動のメーターが一気に振り切れた。
コーヒー豆のテーブルは他でもよく見かけるけど、樽は初。
「樽の中にはコーヒー豆は入ってませんよ」とのこと。そんな事考えなかったけど、言われてみればなるほど、確かに丸々コーヒー樽に見える。
コーヒー産地の世界地図。グッときた。
なぜかこれを見て、『ざくろの色』という映画が頭に浮かんだ。随分前、映画館で予告編だけ見て、いつか見たいと思いつつ、それっきりになっている。全然関係ないのに急に思い出した。
天井が高いので、あちこち仕切っているわりに、広々した開放感もある。
創業37・8年だとのこと。ということは、1976年頃誕生したことになる。外観・内装共に状態が大変良いが、創業時から改装は一切していないそうだ。
当然、これだけの店を世間は放っておくはずもなく、貸切でテレビのロケも入ったとのこと。城田優さんが登場する何か(聞きそびれた)。
※日本テレビ系ドラマ『失恋保険 告らせ屋』にCafeマリーとして登場。
どことは書かないけど、鏡に付いてた謎の現代アート。
…そろそろ注文しましょうかね。
てんとうむしが点々とするメニューもファンスィー。
最初トーストかナポリタンか迷ったが、ピザの文字を見つけ、すかさずピザに変更! それとアイスコーヒー。
アルミホイル! なんか、家みたい(笑)。肩から力が抜けた。
意外とと言ったら失礼だが、生地がもちもちして美味しかった。
アイスコーヒーは加糖。
こうやって写真を並べると、いかにも私1人で貸し切ったかのように見えるが、そこそこお客の出入りがある。たまたま自分1人になったとき、急いで撮った写真である。
カーペンターズの音楽が聞こえてきた。
とてつもなく落ち着ける。他のお客さんの気配を感じながらも、自分だけの世界にも入りこめる。いつまでもここに居たい……。
「雨やんだみたいですね。今日、雨降るなんて知ってました?」
お客さんが帰った後のテーブルを片付けるマダムから声をかけられた。
やっぱり? 雨降るなんて天気予報でも言ってなかったよね! あ、だからか? さっきまでいた若いカップル、団体客が一気にごっそり帰ったのは、雨宿りだったからか。
窓から外を見ると、オジサマ方は傘をささずに、のんびりと車に乗り込んでいった。
年代物のレジが歴史を物語っている。マダムから創業時のお話を聞いた。
この辺りは昔、山だった。虫もたくさん出た。もちろん「てんとうむし」も。それが店名の由来になっている。
現在はマダムがおひとりで切り盛りしている。だからポツポツお客さんが訪れる今くらいのペースが丁度良いのだという。
「今度はお友達と一緒にいらしてね」。外まで見送ってくれた。
そうだ、次回はだれかを連れていこう。そう思いながら、拝島駅まで歩いた。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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