静岡県沼津市市場町
入るなり言われたのが、「食事はない」「ブレンドコーヒーだけ」。
「ケルン」で食事をした後だったので、大丈夫ですと答え、ステンドグラスが嵌った窓際のテーブル席に座った。
20人入るだろうか? 花モチーフのパーテーション、座り心地良いブラウンの椅子、店名入りのカウンター。
先客は1人。常連風の男性。隣にマスターが座りずっと話し込んでいた。
出てきたコーヒーを見るなり美味しいと確信。まずはカップ。この底が細く、少し小さめの白いカップ。他店でも見かけたことがあるが、このカップで出てくる珈琲は外さず美味しい。(例:築地市場「愛養」)
しかも店のロゴ入り。カリグラフィー的な美しい、サボイヤのイニシャルS。
1人分のミルクピッチャーには受け皿付。
いつもミルクを入れた後、垂れるのが気になっていたので、とても嬉しい。
一口。
期待を裏切らなかった。ドッシリして濃く、コクがある。ビックリするほど美味しい。うーーん。コーヒーの美味しさを追求するのが純喫茶巡りの目的ではないとはいえ、思いがけず美味しいコーヒーに出会うと、素直に嬉しい。
せっかくなので、半分ブラック、残り半分に砂糖を入れて、最後の4分の1はミルクを入れて、3種類の味を楽しんだ。いずれも美味しい。
ふと伝票に目を遣った。裏返しで置いてあるが、下だけ折り曲げ表になっているという珍しいスタイル。そこに姉妹店の記載があった。こちらを含め全部で6店。個人経営としてはかなり手広い。
ただし、それは昔の話。すでに閉店している店ばかりで、現在も営業しているのは、ここ「サボイヤ 沼津店」と「らんぶる 富士宮店」だけなのだという。
富士宮、遠いが近いうちに行かねばなるまい。
普段、下手に専門的なことは言わないようにしているが、このときばかりは違った。
「こちらの珈琲すごく濃いですが、普通より豆の量を多く使っていないですか? あと、もしかしたらネルドリップですか?」
まさかそんな話が出るとは思わなかったのか、マスターは一瞬驚き、その後笑顔になった。
「近くに来ることがあれば、また寄ります」と言い残して店を出た。
その後、別の日に富士宮にも行き、姉妹店「らんぶる」を訪問(⇒記事)。あれから季節は冬から春になり、短い春は夏になり、またもや沼津へ。ただし、今回は他の純喫茶「銀嶺」を目指して(←嘘つきめ)。
銀嶺はアンティーク調の大変素晴らしい純喫茶だった(⇒記事)。その後、「マリー・ルウ」というアールが印象的な一軒家喫茶にも入った。市場町で2軒。沼津純喫茶を充分すぎるほど満喫し、そのまま駅に戻ろうとした。が、ああ、見ないようにしていたのに、インディアン少年の赤い看板が目に入ったのが、運の尽き?
うーーー。この機会逃すと、本当にもう機会は巡ってこなそう。入ろう!
またもや、「食事はないけど」と言われた。
前回同様ステンドグラスの窓際席に座り、ブレンドコーヒーを注文し、お手洗いを借りた。
そして戻る途中、壁の貼り紙が目に入った。
「ホットケーキ 自家製 お持ち帰りできます」の文字。可愛らしい手書き。
ええっ?ブレンドコーヒーしかないんじゃないの?
「ホットケーキって、できるんですか?」。焦ってマダムに迫った。「ええもちろん。ただ、粉からとくから時間かかるわよ」の返事。
まさか自家製ホットケーキが食べられるとは!
マスターがカウンターに入り、ホットケーキ作りに取り掛かる。10分くらいかかるけど、と言われたが、実際にはその倍かかった。けど、そんな細かいことはどうでもよい。純喫茶で手焼きホットケーキがどれほど至福の時間かを知っている。
甘い香りが店いっぱいに広がる。ああ、楽しみ。どう? この美しき姿。
表面カリッと、なかはふんわり甘い。とても美味しいホットケーキ。一緒に出てきたコーヒーはもちろん安定の美味しさ。
下の一部が生焼け箇所もあったが、それを差し引いてもとても満足。
正直、純喫茶のホットケーキは外す確率が極めて高いので、最近はお墨つきの評判の店以外では頼まないようにしているが、久しぶりに禁を犯し博打を打ったが、大正解だった。今後は「自家製」の文字があるときに限り、冒険してみようと思った。
「うちは女性のお客さんほとんど来ないんだけどね」とマダムは言っていたが、ホットケーキは常連の男性客が食べるのだろうか? それとも、パンケーキブームの今、ホットケーキで女性新規客を狙ったのか?
前にこちらで教えてもらって富士宮にも行ったとマスターとマダムに言ったが、いまいちピンときてないようだった。あまり印象に残らない客だったのか(そんなはずないが)、私のことは2人とも全然覚えていないようだった。
ところで、最後まで気になったのが店名。サボイヤなのか、サボイアなのか。サボイヤと表記するが、呼ぶときはサボイアと発音するが、そういう理屈だろうか? 笑い飯の漫才の中で、象のことを「ぞう」ではなく実際「ぞー」と呼ぶというくだりがあるが、そんな感じ? それともキャノンと読むのに社名はキヤノンと表記するとか、あんな感じ? もしかしたら、どちらでも良いのかも(笑)。
この辺のゆるさが昭和の純喫茶らしい。
今回は市場町だけで沼津をあとにしたが、沼津の潜在能力はこんなものでは済まない気がする。ということで、後日、再度沼津を訪れたのだった。その話はまたいずれ。
最後に
こちらのサボイヤはほぼ常連さんが中心の超地域密着店。できるだけ場の空気を壊さないよう、できるだけ静かにこっそりと訪問していただけたらと思う。公開した時点で、この記事は私の手を離れ、読む方の自由であるのはもちろん承知しているが…。
サボイヤ マッチ (2014年)
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
コメント
ニ光
(首都圏のチェーン店系の珈琲館とは違います)
2022/04/07 URL 編集
エムケイ
すっかり見落としてました。
まだ行けてません。
他にも沼津はまだまだ……
2022/04/07 URL 編集
ニ光
2022/04/08 URL 編集
エムケイ
調べてみたら外観写真は見れましたが、グーグルでは閉業になってました。
グーグルの閉業は間違いも多いのでなんとも言えませんが、気になります。
2022/04/10 URL 編集
二光
現役です。駅から歩いていける
ロケーションです。
2022/07/28 URL 編集
エムケイ
沼津は今でもぽつぽつ喫茶店残ってますね。
きっと昔は喫茶店だらけだったんでしょうね。
まだ沼津市内で入れてない喫茶店あります。
2022/08/01 URL 編集