みだりに「一番」などという言葉は使うべきではない。
それでも素直に、一番好きなタイプの純喫茶だと思った。70年代の香りがムンムン色濃く漂う、オレンジの色ガラスには「純喫茶 ラポール」。
静岡県三島市徳倉1-4-26
立地も大きい。
私には、辺境の地にある純喫茶に憧れる傾向が強く、アクセスが悪いことも重要。
少しばかりの試練や苦労を与えて欲しい。
こちらも旅人には、若干行きにくい場所にある。三嶋大社や楽寿園等観光スポットが集まる南口ではなく、北口。それも結構歩く。20分強。
長屋のように横に長い、レトロ度抜群な建物に純喫茶ラポールは入っている。アイキャッチは「肉肉」。
寂れた漁村のような既視感のある風景だが、ここは住宅街。
こ、これは!!!
「純喫茶」に小躍り。「Coffee & Music」にも時代を感じる。
レコードが高価で、家庭にオーディオ機器が普及する前、純喫茶では音楽が聴けることを売りにしていたそうだが、その名残だろうか?
軽食メニュー。
ひや麦、ざるそばなんて変わったのもあるが、頼むものはもう決めていた。
お昼の12時まで注文できるモーニングセット。
「ハムエッグと」
と、の後は? 寸止めでモヤモヤが募る。開店時間9時ジャストに入店。
ほど良くゆったりした店内は、窓が多い。
とりあえず、一番陽の当たる明るいテーブル席に座った。
……ところが、そこは喫煙席だとのことで、陽の射さない薄暗い禁煙席に移った。
ただ、いざ座ると程よい暗さで、かえって落ち着けたのでした。
モーニングセットを注文すると、女性2人でカウンターに入り共同で調理開始。そちらをぼーっと眺めていると、目に留まったもの。
赤いライト。
すばらしい、すばらしい、すばらし~い! よくぞ、こんな70年代チックなのが残っているものだ。
床の模様も素敵。
駅から随分と歩いたけど、その苦労は充分報われました。
観葉植物がパーテーション代わりになっているのだが、プランターに注目。
木製で、ぼこぼこと丸いこぶの付いた脚付き。熱海駅前純喫茶「貴奈」でも使っていた。
この写真では分かりにくいが、壁には若花田の色紙が2枚。
クラシック音楽が流れていたが、良い音。Musicに嘘偽りなし。
店内には富士山の写真が多い。オープンリールデッキの上のものは、ライトアップされていた。
東海道本線では熱海から静岡県になるが、正直、熱海には静岡県色をあまり感じなかった。
静岡県色って何?って話ですよね。静岡県といえば、やはり富士山なわけで。
富士山の写真の数々に、ここが静岡県だと強く認識した。さすがは三島。ここに来る途中、富士山ナンバーの車を見かけた。
モーニングセット登場。
「ハムエッグと」に続くのは、コーヒーでしょうか。あっさり解けた謎。
「そのベスト可愛いわね」
ここで、片方の女性(どちらがママだろう?)から、声をかけられた。
「これ、しまむらで買ったんです、600円で。」
ついつい余計なことを言ってしまう。ところが、これが功を奏したのか、話のキッカケとなった。
えー、しまむら?見えないわー。600円なんてすごい。買い物上手ね。だけど、この辺にしまむらあったかしら? いえー、私、東京から来たんですよ。こういう喫茶店を探してたので。あら、道理で! 見ない顔だな、と思って。ねーねー、ちょっと来て! この服、しまむらで600円なんですって。見えないわよね。見えない、見えない。スゴイわ。
ごく自然に朗らかな空気。
帰りもオレンジの扉から。
灼熱の砂漠のようなシュールな光景。しばらく立ち竦んでいると、店の前に車が止まり、目の前のドアが開いた。
お客さんが入ってきた。慌てて、すれ違うように外へ。
「また、近くに来たら寄ってくださいね」
昭和48年(1973年)創業の純喫茶ラポール。ラポールはフランス語で「ふれあい(rapport)」を意味する。
純喫茶 ラポール マッチ (2014年)
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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