おそらく教えてもらわなければ、一生知ることはなかっただろう。
……とまで言うとおおげさか。でも、自分なりに中央線沿線の、それも西荻窪はそれなりに歩き尽くした感があり、まだ見知らぬ純喫茶があったとは驚きだった。
(ぼんぼちぼちぼちさん情報ありがとうございました。)
それも西荻窪の駅からすごく近い。
東京都杉並区松庵3-35-21
閉店
西荻窪通ならご存知だと思うが、南口を出て右に進むと、かなりアレというか、猥雑というか風俗店というか飲み屋というか。雰囲気が戦後のドサクサ。
一応、私も女性でもありますし(多分?)、こういった界隈を歩くのはちょっとねぇ…。ずっと見て見ぬフリをしていたわけです。
ところが、このドサクサ界隈をほんの少し先に進むと、一挙に閑静なエリアになった。
静かで落ち着いた住宅街に、その純喫茶はあった。
ところで、これは?
出窓のようだが、光の出入りするのは左右の細い窓のみ。どこか現代アート的な異彩を放つ壁面装飾。なんだかすごく不思議。
店名も頗る個性的な「珈琲 ばばーる」。
ドアは多分スモーク入っていると思うけど、夜なので中は丸見え。
正方形のドアノブを押して店内へ。
渋い色合いのカラーの造花。アンティーク感に痺れる。
天井にも渋いアンティークなシャンデリア。
店内全景はこのような感じ。
なんだか中近東のカフェ! (行ったことないけど…)
独特な空気感。一瞬で虜になってしまいました。
壁沿いがぐるりと木製のベンチになっており、その一角に腰を下ろした。他にお客さんはなし。
壁には仮面が掛かっているが、『ジョジョの奇妙な冒険』の石仮面みたいで、少し怖い。大げさじゃなく、子供が見たら泣き出してしまうかも。
置物の一つ一つがセンスあり。無造作にも雑多にも見えなくもないが、全体的にみると、ばばーるワールドとして完成された世界観。
テーブルには茶色く変色したメニュー。表が珈琲、裏が紅茶。物凄く味がある手書きのメニューだった。
カウンターからマダムが出てきて、それとは別にクリアファイルに入った大判のメニューを渡された。軽食も色々あったが、生フルーツジュースが気になった。オレンジ、レモン、バナナ、りんごがある。確認すると「りんごは今はできない」とのことで、生オレンジジュースに。
果肉がたっぷり入ったフレッシュなオレンジジュース。
ストーブで暖まった店内で飲むジュースは本当に美味しい。
テレビではソチオリンピックの中継。
けど、スピーカーからはクラシック音楽も流れ、耳はそちらに引きずられた。なんて素敵な異空間……。
窓辺をビッシリ覆う植物は、30年間伸びた結果なのだという。(別の話をしたときに28年営業しているとも言っていたので、四捨五入しているのか、それとも喫茶営業を始める前から育てていたのかは不明)
「まだゆっくりしていってください」と言ってくださるマダムに、「ばばーる」という不思議な店名の意味を伺った。
こういうことは謎のままにしておいた方が良いのは分かっているけど、どうにも気になり聞いてみた。
注:謎のままにしておきたい方はこの先を読まないように。
「秘密です」
そんな返事が返ってきたら、きっとそれ以上は突っ込まなかったと思う。快く教えてくれた。
「よく『ぞうのババールですか?』と言われますし、『あっ!婆ーる居た!』なんて言って入ってくるお客さんもいますが、ばばーるはフランス語なんですよ」
お喋り談話室という意味なんだとか。
ああ、なんて素敵なネーミング。次回は昼下がりにここで中近東気分で過ごしてみたい。誰かとお喋りをしながらだらだら、と。
なんとなくだが、コーヒーも美味しいような気がする。
珈琲 ばばーる マッチ (2014年)
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
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