喫茶店めぐりを続けていると、得ることは多いが、失うことも多い。いろんな意味で…。
伊東に着き、まずは銀杏通りの「コロンビア」に向かった。
静岡県伊東市東松原町17-4
庇も扉も壁もすべて真っ白。
一見カフェに見えなくもないのだけど、この喫茶&食事というフレーズと店名のコロンビアで喫茶店だと確信。
思い切って扉を開けた。
あっ!間違った! 一瞬、立ち止まった。
スナック???
薄暗い店内、ライトアップされたカウンターには酒瓶、壁には外国ビールの銘柄が入った看板があり、カラオケステージもある。
引き返すか迷っていると、朗らかな笑顔のマダムが出てきて、「いらっしゃいませ。どうぞ」
優しく声をかけてくれた。
ぽつぽつと地元の方らしいお客さんがいたが、奥の席が良さそうだったので、そこに。
コーヒーを注文してから、お手洗いに行こうと席を立った途端、慌てたのか、水が少しこぼれてしまった。けど、まあいいや(笑)、とそのままに。カーテンの奥からは、爽やかなミントの香りが漂っていた。
戻ってきたら、テーブルはすっかり綺麗に拭いてあった。
美味しいコーヒー。やっぱり豆はコロンビア?
椅子と腰壁が茶色のベルベットで統一されてて、カラオケとか酒瓶を除けば、純粋な喫茶店。
音楽はクラシック。BGMにしては大きめの音量でヴァイオリンの音が響き渡っていた。
ストーブで暖かかくて、この日初めて心の底から落ち着けた。
この日は伊東に来る前、網代で途中下車し、「you」の素晴らしい空間に酔いしれ、伊東線の時刻の15分前に店を出た。
が、欲深い私は、つい隣の喫茶店にも入ったのだった。滞在時間10分。勢いで入ってしまったのだが、あまりにせわしない。もうこういうのはやめよう。椅子に背をもたれながら、そんなことを考えた。
でも、もう1軒だけ。伊東に来たら必ず寄ると決めてた喫茶店がある。
「伊東の方?」
ここは、観光客の動線からやや外れた場所なので、一見客は少ないのでしょう。帰り際に聞かれた。純喫茶が好きでそのためにここまで来たと話すと、
「なら、『わかば』さんにも行った方がいいわよ。うちも50年以上だけど、それ以上古いから。」
まさしく、これから私が行こうとしてるのが、スイートハウスわかば。
わかばのあるキネマ通りの話もしてくれた。もともとは映画館があり栄えていたアーケード街だが、今は映画館は閉館し、シャッター通りになっている、と。
失うこともあるが、やはり得るものはそれ以上に多い。喫茶店巡りを続けていると、楽しいこともあるが、ときに自信を失い、もうやめよう、とたまに思う。それでもやはり続けているのは、こういうちょっとしたやり取り、交流という、思わぬご褒美のおかげだ。
そして、このコロンビアさんだが、50年以上(55年だったかな?)営業しており、一時期深夜営業の喫茶店、その後スナック(カラオケはその名残)、現在は喫茶店。時代と共に変化してきた長い歴史がある。
「コロンビアの名前を覚えておいてね」
マダムに見送られながら、キネマ通りに向かった。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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