理想の条件、などというものは、ない!
これまで、条件を掲げ、当てはまる項目が多ければ多いほど、理想の純喫茶に近づく、と思っていた。
けど、それは机上の空論に過ぎなかった。
書を捨てよ、町へ出よう。そこには、素敵な純喫茶がある。茨城県石岡市から紹介する2軒目「喫茶 サニー」。
茨城県石岡市国府3-3-22
閉店
…といいつつ、この翌日、新たな良書を手にするのだが、その件については、また別のときにでも。
石岡について話を戻そう。看板建築の並ぶレトロな街並みではあるが、随分と寂れていた。
たとえば、ここ。
前回紹介した「喫茶 四季」から歩いて1分とかからない、同じ並びにある長屋はシャッター街。
ところが、1軒の純喫茶が営業中。
見るからに場末の匂いぷんぷん。これは、もしや、私の大好物のコーヒー&スナックでは?
…と思い、赤い庇で隠れた、色褪せた緑色の看板を確認したが、残念ながら(?)、「喫茶 サニー」。でも、サニーの斜めっぷりは、なかなかカッコ良かった。
でも、なんと言ってもこれ。このビジュアル。この感じ!
伝わらない?
アールの3連窓、金属格子、扉から覗くカーテン。どれか一つじゃダメで、全部集まった、この感じ。うまく伝わるかな?
強いて理想の純喫茶の条件に追加するとしたら、「この感じ」としか言いようがないのだ。
緊張するも、トキメキ最高潮なのが、この瞬間。使い込んで剥げた取っ手をつかむと、軽く扉が開き、店内へ。
アールは窓だけではなく、天井、壁の装飾にまで及んでいた。
あゝスバラシイ。こんな純喫茶を探していたのよ。思わず出遭った理想の純喫茶。
理想? そうだ、条件を掲げていたっけ。ズラズラと条件を列挙し、つい最近、追加と修正をし、現時点での条件としてアップデートしたばかりなのだった。
⇒理想の純喫茶
※内容見直し検討中
けど、どう? 全然、当てはまってないじゃない。(項目24ぐらい?)
蔦も絡んでいなければ、煌びやかなシャンデリアもない。深紅のベルベットの椅子もなければ、「純喫茶」の文字もない。
でも、なんだろう? 入った瞬間、感じた「求めてた感」。甘酸っぱく、キュンと切ない気持ち。くさい表現だが、忘れかけていた青春の欠片を見つけた。
下手な写真でごめんなさい。座った席から、窓を望むの図。
アールの3連窓に、陽に透けるカーテンがかかっている。
さて、ここで、ママさん登場。「寒くない?」と聞いてくれ、大丈夫ですよと答えたら、メニューを手渡された。
チーズトーストをと思ったら、チーズを切らしているとのことで、ジャムトースト、とコーヒー。
パンが柔らかくて激旨。そういえば、BGMはラジオだった気がする。
実は…なんて改まって言うのも恥ずかしいが、私は社交的でもなければ、積極的に広く人付き合いをするタイプではない。むしろ逆。
ブログだけ見ると、どの純喫茶に行っても、店主に積極的に話しかけているように思われるが、たまたま濃い体験記をUPしているだけで、日常の喫茶店での過ごし方はすごくあっさりしている。疲れているときは、特に。
それが、旅先のような非日常の場、または一瞬でトキメク場合は、どこからその積極性が!? 自分でも驚く。珠玉の純喫茶は潜在能力を引き出す力があるのだ。
「メニューの手書きの字が味わい深くて素敵なので、写真に撮りたいのですが…」
店内内装の写真ならいざ知らず、メニューくらいこっそり撮ってしまえばいいのだが、なんだか言わずにいれなかった。そして、「味わい深い」などという、文章でしか使わない言葉を、初めて口にした。味わい深い、これはメニューだけでなく、店内全体を流れる空気にも言えることだが。
悲しくなるくらい下手ですが、この位置が一番素敵で、何枚も何枚も写真を撮り、一番マシなのがこれ。
私の下手具合は皆さん承知だと思うので、もっと綺麗なのが見たかったら、映画を見てみよう!
えっ!? 映画。そう映画。昨年10月に、サニー店内で、映画の撮影をしたのだとか。
「映画のタイトルは思い出せないのだけど、NHKで、かなめ、かなめ…」
要潤!
バブル期の1985年設定とのことで、インベーダーゲームを持ち込んでの撮影になったのだとか。そのとき、映画スタッフが、「窓のアールがいい」とこだわっていたそうです。
店の外でも、当時を忠実に再現して、長いスカートの女子高生を歩かせ、撮影したとのこと。茨城県はヤンキーが非常に多いというし、スケバン(死語)みたいな感じだろうか。
※どうでもいいかもですが、ピース綾部&渡辺直美がリーゼントの茨城県ホームページ(自虐ぶりも必見)
気になって、後で調べてみた。『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』ではないかと? でも、8月31日に公開したようで。時期が悪い。劇場でも見れないし、DVD化もまだだろうし。うーん。厳しい。
帰り際、またもや立ち止まる。
キャッ!扉。陽の光に透けて、カーテンの模様が浮かび上がって、素敵~~
しばし、うっとりと眺めていると、
「東日本大震災で扉がゆがんじゃったの」
半開きの扉の理由を教えてくれた。
人見知りの話下手のくせして、情熱に突き動かされて、テンパッて、変なこと一杯口走っちゃって、怪しさ満点の私なのに、優しく受け止め、色々教えてくれたママさん、どうもありがとうございました。
店内には、ママさんそっくりの似顔絵が飾ってあった。これまた情熱につき動かされ、描かずにはいられないお客さんがいたのだろうか。
条件はない、と冒頭で言い切ったが、こんなのはどうだろう?
理想の純喫茶は、人を情熱的にする。( ̄ー ̄;
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
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