「西荻窪の喫茶店では、どこに行くことが多いか?」
数日前、とある純喫茶好きの方に、質問を投げかけたところ、返ってきたのが「物豆奇」だった。
なぜ?なぜなぜ? もちろん有名な純喫茶だけど、西荻窪には喫茶店いっぱいあるし、あえて「物豆奇(ものずき)」なのはなぜ?
東京都杉並区西荻北3-12-10
「国立邪宗門に内装が似てるから」
国立邪宗門は2008年12月に閉店した、伝説の喫茶店。私は一度も行ったことがありません。
物豆奇は前店主が国立邪宗門をモデルにして造り、店名も内装も変更しないことを条件に、現マスターは店を引き継いだ。
「国立邪宗門に似てるから」は、すなわち国立邪宗門に通っていたファンを意味する。
羨ましい。
私はとうとう一度も行かぬまま、閉店してしまった。
ただ、ランプや古時計等アンティークな雰囲気は、私が行ったことのある、現存する他の邪宗門、荻窪店や世田谷店ともよく似ています。
実際、物豆奇さんは、店名こそ邪宗門ではないものの、邪宗門とは繋がりが深く、年に一回の門主会にも参加されているそうです。
実を言うと、何年もの間、物豆奇さんはご無沙汰していました。言い訳すれば、西荻は喫茶店が多いから。つい、駅前のもっと近い方に行ってしまうから^^;
ですが、数年ぶりに行くことに。キッカケは、やはり邪宗門。
「昨日、お店閉めた後、物豆奇さんがうちに寄ったのよ」。一時期、よく通ってた荻窪店のママさんより、物豆奇さんのお名前を何度もお聞きしてました。
そういえば、ママはこんなことも言ってました。桜ヶ丘のマスターも、店が休みの日には、バイクで世田谷店、荻窪店に来ていた、と。
話は前後しますが、今年の春、仕事で聖蹟桜ヶ丘に行きました。せっかくだし、この機会に、と、その後、ご無沙汰していた桜ヶ丘邪宗門に寄ってみると、なんと閉店。昨年10月に、マスターはお亡くなりになったそうです。
いろいろ重なっての、物豆奇。
ケーキと一緒に頼むと50円引きになる珈琲は酸味が際立つ。物静かで控え目なマスターですが、この酸味にマスターの静かなる主張を感じます。
読書を始めたが、照明はやや薄暗く、すぐに本を閉じた。
しばらく瞑想。
BGMは、この場にふさわしいジャズ。時計がコチコチとリズムを刻む。椅子がソファータイプだったら、このまま眠ってしまいそう…。
ボーン! いきなり時計が鳴った。一瞬思考が遮られる。と、次々と時間差で他の時計もボーンボーン。心地よい静寂が破られ、素に戻った。そろそろ帰る時間。
お会計をしようとしたが、マスターは相変わらず控え目にカウンターの奥。
「聖蹟桜ヶ丘に行ってきました」と切り出すと、「残念です」と静かな口調で返ってきました。
二言三言会話を交わしつつ、ふと思った。物豆奇と桜丘のマスターは、感じが似ている。もの静かで、細身で、オシャレな雰囲気なところが…。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
コメント