雨が降っていても、鎌倉は賑やかだった。特に小町通り。
もしかしたら、少しは雨の影響で人が少ないのかもしれないが、一斉に皆が傘を広げているので、結局は帳消し。
すぐに小町通りから外れ、向かうのは「珈琲 井川」。
住所は鎌倉市小町だが、小町通りからは大分離れている。
神奈川県鎌倉市小町1-10-23
「純喫茶まさお」を教えてくれた方から、鎌倉穴場純喫茶として、こちらも教えてもらった。
鎌倉局から道を入っていくと、由緒がありそうなお寺を見かけたが、足早に通過。
雨が降っていたからというのもあるが、井川が閉まるのは16時と早い。お寺はその後にしようと、先を急いだ。
このあたりは住宅街なのか、静かだった。
珈琲井川の黒い看板が目にとまり、これかしら?と駆け寄るが、手前だった。看板の位置が紛らわしい。あと、この建物もまた妙に趣がある。
隣の洋館の1階が喫茶店。
黙っていると、若干入りにくさはあるが、入口にちょっとしたメニューも出ているし、思いきって扉を開けた。
雨天日のわずかな光が窓から差し込むが、明かりを落とした店内は、やや薄暗い。
カウンターには若い女性が1人。
先客はなく、迷っていると、「お好きな席へどうぞ」
一番手前のテーブル席にした。ここからだと扉から入る光がギリギリ届くので。
目が慣れた頃、気付いた。テーブルに重厚さがある。一枚板ではなかろうか。
窓辺の意匠も凝っている。子供の頃に憧れた洋館のイメージ。白いワンピースを着て、頭に大きなリボンをつけた、お金持ちのお嬢さんがひょいと顔を出しそう。カウンター内の棚には、コーヒーの黄色い缶が整然と並んでいた。
ブレンドコーヒーとプリンを注文。最近、プリンにはまっているので、メニューにあると、つい頼んでしまう。
しかも、ここのプリンは200円。単品では注文できないかもしれないけど、ブレンドも500円だし、鎌倉観光地価格を考慮すると、かなり安い。
クラシカルで素敵な内装の店内で、美味しい珈琲とプリンをいただく。これで、BGMがジャズなら完璧。
…だけど、ラジオ (-_-; もったいない。
いつの間にか、もう1人年配の女性が現れた。はきはきとした口調で、オーラと気品がある。
もしや、この方が? だとしたら、若すぎる。
なんのことかというと、こちらは、元女優・井川邦子さんがオーナーの喫茶店。
井川邦子さんは、木下恵介監督や小津安二郎監督の映画に出演していたらしい。
そういえば、小津作品には、原節子さんがよく登場していた。少なくとも、私が観た映画には全部出演していた。今では私生活がベールに包まれている、伝説の女優。現在は90歳を超え、鎌倉に住んでいるんだとか。
とすると、井川邦子さんも年齢が近いのだろうか? やはりオーナーはこの女性とは別の方なのかも。
閉店時間も近づき、帰りに、その女性にマッチがあるのかを訊いた。
「37年前にたくさん作ったんですけど、みんな配ってしまって。最後の1個はこちらに…」
小さな額に埋め込まれていた。
この後、まだまだ降り止まぬ雨の中、スルーしてしまったお寺に寄った。「本覚寺(東身延)」という日蓮宗の本山(由緒寺院)だった。
そばには「滑川」という川があった。一瞬、川沿いの小道に吸い寄せられそうになったが、橋を渡った。小町から大町になり、かなり年季の入った魚屋を見つけ、驚く。
さらに先には、日蓮宗の本山(霊跡寺院)である「妙本寺」。これ以上は、さすがに雨がひどいので、今回はやめにした。
もしかしたら、穴場なのは珈琲井川だけでなく、周辺も? 穴場観光スポットなのかもしれない。この続きは、また別の機会に。
[2013/05/24 追記]
井川邦子さんは2012年10月4日お亡くなりになったそうです。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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