名前がない純喫茶に入った。正確には、表に名前が出ていなかった、というべきか。
三崎港にバスが着く直前、窓から見えた古めかしい建物は、三崎でよく見かける看板建築の1種だろうか。観光地には珍しくひっそりした佇まい。
神奈川県三浦市三崎4丁目
※閉店
道路を挟んで向かいにも、「さくま書店」という看板建築がある。普通はこのように店名が建物のどこかにあるはずだが……
建物にもないが、外に置いてある看板にも店名はなく、「珈琲」の文字だけ。
もしや…。入るには店名が合言葉? 正しく言えた人だけが入れるとか。興味本位の冷やかしは、すげなく追い返されるとか…。うーん。
もちろん妄想ですよ(^^;
ただ、長いこと私の中では、店名不詳のまま、「謎の純喫茶」フォルダに閉じ込めていた。
ところが、時折ブログ上にてやり取りをしている、海塩みかんさんのブログ「好きな場所に行くからねっ!」で、この謎の純喫茶が紹介されていた。(記事最後のリンク参照のこと)
「喫茶 KANRO(カンロ)」というらしい。中の雰囲気も良さげ。
今度行ってみようかな、っていつ? 三崎は遠い…。
機会が訪れたのは、最初の出会いから2年近くたってからだった。先日「キーコーヒー」が営業再開し、久しぶりに三崎に来て、その後にやっと入った。
ドアを開けると、おお、良い感じの正統派純喫茶空間。
カーテンと椅子はワインレッドで、統一感ある深い色合いにグッとくる。胡蝶蘭の鉢植えや花の絵柄が入ったランプに女性的な品の良さが感じられた。
ただし、人がいない。
お客もいないが、店の人もいない?
しばらくカウンターの前でうろうろ。営業時間と定休日を伝えるピエロが目に入った。これ、外に出した方が良いのでは? ずいぶん入りやすくなるだろうに…。と思いながら、5分位待った。店舗兼住居なんでしょうね。奥からマスター登場。
優しげな笑顔とソフトな雰囲気。
やっと落ち着いて席に着いた。もちろん合言葉は不要である。
テーブルにあるメニューを開くと、KANROと書いてあった。ドリンク中心で、食事はホットケーキ等ごくわずか。本来の意味の純喫茶である。
珈琲にはこだわりがあるのか、ブレンドコーヒーが3種類。苦味系もあったが、酸味系のブルマンブレンドでお願いした。
実は純喫茶めぐりを続けるにつれ、私の珈琲の味の好みが少しずつ変わってきた。前は苦い珈琲を好み、酸味があるのは苦手だった。酸っぱいと感じていたのだ。
いつからだろう? たまたま酸味がまろやかで美味しい純喫茶に出会い、以来酸味に目覚めたような気がする。
注文すると、BGMのクラシック音楽に混じり、豆を挽く音が聞こえてきた。
期待できそう!
ほどなく素敵なカップで出てきた珈琲は、期待通り美味しかった。キーコーヒーに続けて、美味しい珈琲が飲めた。三崎の珈琲はレベルが高い。
帰りにマスターと少し話した。
どうして店名が外に出てないのか尋ねると、
「台風で名前が取れてしまったんです」
台風? 名前が取れてしまうほど強烈な台風というといつだろう? 少なくとも2年前にはすでに名前はなかった。港町だと、それほどの規模の台風でなくとも被害が大きいのだろうか。
そして、こちらでもキーコーヒーの話題になった。
「三崎の純喫茶といえば、キーコーヒーさんですね。最近、営業再開したんです」
ちょうどキーコーヒーの後に寄ったので、見られていたのかと思い、ドキッ!
みかんさんのブログでも、パン屋さんでキーコーヒーさんの話題が出ていたし、地元では一番有名な純喫茶なんだろう。
でも、キーコーヒーも素敵だけど、こちら喫茶KANROも、観光地にしては落ち着いてコーヒーが飲める、通好みの素敵な純喫茶だと思う。
家に帰ってから、Googleマップで調べたところ、「喫茶 甘露」になっていた。
甘露? 甘露煮とか甘露飴とかの甘露?
そもそも甘露の意味自体よく知らない。さらに調べてみると、甘露には「飲み物が美味であることの喩え」という意味もあるらしい。これは、まさしく、この純喫茶にピッタリ。
「喫茶甘露」 いい名前だ。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
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