1年ほど前になる。
日本橋の「喫茶 恵」に行ったのは、すっかり日が暮れた夕方6時頃。雑居ビルの1階で、入口はやや奥まっており、看板の印象からスナックのようにも見え、入りにくい。
東京都中央区日本橋2-2-15
※閉店
が、中から洩れる明かりに誘われ、思い切って扉を開けた。
「もう終わりですか?」
サラリーマンらしき男性1人、テレビがついてるカウンターの奥にはママさん。店内にはカレーの匂いが漂っていた。喫茶店というより、まるでよそのお宅の晩御飯風景。
「えーと。大丈夫ですか?」と一応、訊ねてみる。
一瞬で、ママさん、パァァと笑顔になった。「もう終わりなんだけど…珈琲ならお出しできるわ」
営業時間終了後、常連さんとまったり寛いでいたわけだ。申し訳ないな、やっぱりお邪魔だ。帰ろう、と思った、んですが、サラリーマン男性客は「じゃ、これで」と帰ってしまった。
先を越された(笑)。戸惑いながら突っ立っていると、「私、女性のお客さん好きなのよ。嬉しいわ」。
なんだか帰りにくくなった(笑)。
ってことで、戸惑いつつも、席についた。
乙女チックな白い机はロココ調。ママさんの好みで揃えたのだろうか?
で、壁には可愛らしい照明と造花。
こんなのも。
置いてある座布団がチグハグだったり、私物が雑然と積んであったりするが、それも純喫茶ならでは。
テーブルにはお菓子。珈琲飲みながらしばしママさんとお話。
しばし……うーん……
しばし……?
しばしなんてものじゃないです!!!この後、2時間位ずーーーっとお話は途切れることなく続いたのでした。
こちらのママさん、すごく話し好きな方。最初にも言ってたけど、女性のお客は珍しいから嬉しいらしい。普段、近くの会社にお勤めの男性客ばかりで、ほとんど常連さんばかりなのだとか。
「何十年も通ってくれるお客様は、今では会社でも偉くなってるのよ」と誇らしげに語る。
私は喫茶業のプロではない、だから高いお金は取れないと謙遜するママさんは、元は大手商社の秘書をされていたそう。そのときの話、亡くなった歳の離れた旦那さんに大事にされていたという話。その他あれこれ。白いロココの机はイタリアで買ってきたのだとも教えてくれた。お値段もそこそこしたらしい。
話の内容から、お歳はそれなりに召していると思いますが、いつまでも少女の面影を失わない女性でした。純粋な方でしたよ。
「人形町に美味しい店があるのよ。そうねー。これから行きましょう!ご馳走するわ」
えーーー!!!ご馳走って!私、客ですが!そんなんしたら、大赤字じゃないの!わーー!わーー!嬉しいお言葉ですが、遠慮します。
思わずノリでついて行ってもいいかも、と思ったりもしましたが、初対面で、いきなりご馳走にはなれませんよーー!(第一私は一見客)
2時間もいたんで、結構遅くなった。そろそろ帰ろう。「コーヒー代、コーヒー代」と壁のメニューで金額を確認すると、250円。
一瞬、目を疑った。
嘘でしょう。ここは日本橋。さらに驚いたのは、モーニングタイムは200円。プラス50円でトースト付きだって! 250円のモーニングか。ド○ール等チェーン店より安い。破格にも程があります。
ひたすらに感心して、「安いですね。安いですね」とつぶやきながらお代を渡そうとしたのですが…
「いえ、今日は仕事として出したわけではないので、いいです。その代わり、また来てくださいね。その方が嬉しいわ」とニッコリ。
私、本気で感動しました。(ノ_-。)
そのうち行こうと思っていながらも、あれから1年経ってしまった。ママさん、まだお元気だろうか?
喫茶 恵(けい)マッチ (2012年) ※画像をクリックするとマッチ側面が見れます。
[2013/04/17 追記]
こちらをご覧になっている方から、「貸し店舗」の貼り紙が出ているとご連絡いただきました。別の場所に移転というのも考え難いので(0%ではないけど)、閉店されたのだと思います。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
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