都営浅草線で浅草の隣駅「本所吾妻橋」で初めて降りた。お目当ての喫茶店があるからだ。
三つ目通りの「ブラジルコーヒー」である。
東京都墨田区本所3-8-11 (三つ目通り)
2020年12月閉店
ここは1階が店舗、2階が住居のようですが、営業しているのかどうか分からないほどヒッソリしています。
「営業中」の札と中から漏れる明かりで確認したものの、半信半疑でドアを開けました。
60~70代の女性が客席に座りテレビを見ていました。他にお客はいません。
広すぎず狭すぎず。端っこのテレビが見える席に座りました。
「なんになさいますか?」と聞くのに、メニューは出てこない。昔ながらの純喫茶の典型。慌てて壁の手書きメニューからトーストとコーヒーにしました。
「お姉さん、トーストとコーヒー」とオーダーを通す声がしたのでそちらを見ると、カウンター内に別の女性が見えました。どうやら姉妹で営んでいるようです。
出てくるまで手持ち無沙汰で、沢口靖子が出るテレビドラマをチラ見しつつ、テーブルの上を眺めました。「ブラジルコーヒー」とマジックで書かれたオレンジ色のライターがあった。
ほどなくトーストとコーヒーが到着です。トーストのパンは柔らかく、バターのしみ込み具合が丁度良い。コーヒーが私には濃すぎたので、水と交互に飲みました。
コーヒーが飲み終わる、まさにそのとき、妹さんが「ランチサービス」のボートを持って外に出て行きました。
オムライス・カレーライス等軽食に味噌汁・コーヒー付きで、700円から900円程度のランチセットがあるらしい。あーー。ランチにすれば良かった、と悔やんだが、トーストも美味しかったので、まあヨシとしよう。ほんの少しだけランチサービスより安いし(セコい)。
それにしても他のお客はちっとも来ません。そういえば三つ目通りは車の走る大きな通りだが、人通りがあまりありませんでした。
そろそろ退散しよう。妹さんに目で合図すると、またもや「お姉さん、お会計」。姉妹の連携プレーです。
ここで初めてお姉さんと口をききました。
テーブルのライターを見ていたので諦めてはいましたが、念のためマッチの有無を確認。
だが淡い期待空しく、「ない」とのこと。昔からマッチを作ったことはない、と言っていました。「うちはマッチもおしぼりもないのよ、その分、お値段を安くしてるのよ」
「でもねぇ…、昔はソーサーにもお店の名前を入れてたこともあるのよ」とカウンターから「ブラジル 本所三つ目通り」と文字の入ったソーサーを見せてくれました。
嬉!テンション上がって、ソーサーにカップをのせた写真を撮らせてもらいました。
この私の盛り上がりぶりにただならぬものを感じたのでしょうか?「もしかして、コーヒー屋めぐりをしてるの?」とたずねられました。
ときおり若い方で写真を撮りたいと申込があるそうです。「うちなんて古いだけでねぇ…。もっと改装してキレイにした方がいいんでしょうけど。もう歳だしね」
いーえ!そんなことありませんよ!この古いのがまたいいのですよ!と私のマニアックな趣味を力説。
あちこちの喫茶店巡りをしているということ、マッチを集めているということ。お決まりのパターン通り熱心に語らせていただきました(笑)。
すると、塩沢槙さんの「東京ノスタルジック喫茶店2 郷愁の喫茶を訪ねて」が登場。ブラジルコーヒーの掲載ページを見せてくれました。実は私は前作「東京ノスタルジック喫茶店」に掲載されている「荻窪邪宗門」によく行くのですが、マダムから続編が出ることを教えてもらい、発売日に即、本屋で購入していたのでした。
そこで見た写真が頭に刷り込まれていたせいか、店に入ったときからずっと違和感を感じていました。本を見て思い出した。カウンターの文字だ!
見比べてみました。「BRAZIL」「Specials SNACK」が
「BR ZIL」「S SNACK」になっています。
聞くと、3月11日の東日本大震災のとき文字が落ちてしまったそうです(涙)。
カウンターの下は本物の煉瓦。
縦線の入った黒い壁がトタンに見えたが、コペンハーゲンリブという壁材だそう。トイレのドアに「TOILET」がスタイリッシュ。
昭和拾一年五月五日が開店記念。表にも手書きでそのように書かれています。五月五日になにかこだわりがありそう。
今回はいつも以上に写真と共に文字数が多くなってしまいました。
以前、何度かお会いしてる方から、「文章が長いときと短いときでどこが違うの?」と聞かれたことがあります。
あまりにも素敵すぎて言葉が少なくなることもありますが、長いときは間違いなく気に入った店です。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
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