気仙沼最大の衝撃「王将飲食街」。
お断りしておきますが、この記事はとても長いです。覚悟して下さい。
最初は古いアパートだと思った。
2階の窓が割れている。外階段があるけど、上る勇気はない。
えっ?店?なにやら存在感たっぷりの看板が付いていてるじゃありませんか。
半地下みたいな1階が飲食店街。ここって入れるの?
んーまあ別にどうでもいいかなあ。そのまま坂を上る。ふと振り返ってみたら、えー何?
将棋の駒が付いてるじゃないですか!
ひゃあ~~!「王将」だから、将棋。ド直球なセンス!
入口まで導くスロープ状のアプローチ。これは、入ってもいいということですよね(^_^;)?
足元は小さな水路で、水の流れる音が聞こえてきます。
店名一覧群の看板!この個性のぶつかり合い。ギュギュっと濃密。どれもこれも昭和丸出しのデザイン。まるでマッチ箱が縦一列に並んでるみたい。しびれる。
それにしても、こんな目立たない人気がない場所に密集する飲食店。シュールな光景です。
暴力追放!
殴り書きのような粗野なタッチ。血を連想させる赤文字。入口から強烈なパンチを食らいます。
しかし一歩足を踏み入れると、目の前にあるのはあまりにも退廃的な美しさ。一気に引き込まれてしまいました。
むせ返るような濃密な空気がムワッと迫ってくる。これ以上ディープな場所を他に知りません。究極。ゾクッとしました。
大きなオレンジのダイヤ、暴力追放の店、覚〇い〇の文字。怖気づきます……。
おどろおどろしい。
コントラストきつめの「BAR由美」。こんなデザインのマッチあったら素敵なんですが、迫力ありすぎてこの場ではただただおそろしかった。
ダイヤ、飛車角、BAR由美の最強トリオ。
有無を言わさぬ凄み。
看板の存在感が凄い。随分と低い位置に付いているので(目の前の近さ)、上からも左からも右からも迫ってくる。全身にズドンとのしかかってくる目に見えぬ重み。もの凄い圧迫感。威圧感。
「飛車角」と「BAR由美」はタッグを組んで脅しにかかってきます。
王将だから将棋にちなんだ店名の「飛車角」。この直球さが異様におそろしい。なぜでしょう? トランプや将棋モチーフには本能的におそろしいと感じさせる何かがあります。水戸の「クイーンシャトー」もそうですよね。しかし一瞬で心をとらえる魔力もあります。
ダイヤだけでなく、妙に発色の良いオレンジや緑のドア。
ここはただのスナック&バー街ではありません。証拠?もちろん、そんなものありません。感じるものが全てです。ここに居れば分かります。デザインに威嚇されます。ただお酒を楽しく飲むだけの店が、こんな毒々しいドギツイ看板やドアを狭い空間にギュウギュウに詰め込むわけないですから。
ところで今でも現役の店はあるのでしょうか? パッと見はもうどこもやってなさそうに見えますが、妙に鮮やかなドアの色を見てると、案外やっているのかも?
突き当りは艶めかしい。ピンクの壁と真紅のドア2つ。「絵里菜」という和洋折衷の看板があります。
ドアには60's-70's感全開な花模様のシール。
毒々しくも可愛い!所変われば、乙女心ど真ん中系純喫茶ですよ。「中屋洋菓子店」の喫茶室を思い出してしまいます(見比べたら同じシール)。
さては店主、純喫茶好きだな(笑)。
どうでもいい情報かもしれませんが、花模様は「絵里菜」ではなく、隣の「洋ちゃん」というお店のドアです。
「絵里菜」のドアには不自然な凹凸がある。これは蝶々ではないでしょうか。おそらく閉店と同時にドアを塗りこめてしまったのだと思います。純喫茶でも閉業するとテントの店名を塗りつぶしてしまいますが、それと同じです。ドギツイ鱗粉をまき散らす色彩鮮やかな蝶々だったと想像します(見たかった)。
「絵里菜」は「えりな」以外あり得ないと思うのですが、一つだけ「ARINA(ありな)」のフリガナもあります。看板を製作する業者が間違えたのでしょうか? 絵は「あ」とは読めませんよね(笑)?
通路が左右に分かれています。
右を見ると…!
どれだけ暴力追放を訴えても、無駄、無駄、無駄。暴力がこの場を支配している図です。「暴力学園」とかいうタイトルの映画が撮れそうですよ。「沖」の字もその筋系でこわい。「狆」にも見えますが、「おき」というフリガナがありました。「バー翼」。ダークサイドが凝縮された一画。うすら寒くなってきました。
左へ目を向けると、遠くに見えるのは「ゴミを捨てるな」という字。さっき「しれとこ」の建物にもありましたよね。
そちらへ向かって歩くと…!
ドアが…!
ひょっとして営業してるの? まさか…!
周りは全部閉業してても一軒だけ現役の店。珍しいことではありません。もし見られたら非常に気まずい。そしたら、引き返そう。そろりそろり近づくと…
ドアは椅子で固定されています。
中を覗いてみましたが……
おそらく何年も前からこのままなのでしょう。とてもじゃないですが、中に入る気にはなれません。
こちらが目的の(?)「ゴミを捨てるな」。
崩れかけた足元の怪しい階段を降りて、隣の建物に近づいてみます。
そばには最初に見たアパートっぽい2階へつながる外階段の裏側。
入ろうと思えば入れなくはありませんが、あまりにも荒れてて私の好みからは外れます。とても入る気分になれません。外から眺めるだけにとどめておきます。どうやらこちらも「王将飲食街」と同類の飲食店街のようです。
増設に次ぐ増設。この辺の建物はぐちゃぐちゃで、境界線がイマイチ分かりませんが、ここは例の「しれとこ」のビルではないでしょうか。「ゴミを捨てるな」の共通点から。でも、テイストが「王将飲食街」とそっくりなので、同じ持ち主の可能性も(実際のところは分かりません)。しかし、持ち主が違っても、この手は誰がやっても大体似たり寄ったりの造りになりそうですね。
これまで甲府もですが、こういう怪しい飲食街を一貫して「歓楽街」で押し通してきましたが、そろそろ厳しいかなとも思ってます。「歓楽街」だとあまりにも漠然としています。
遊郭、赤線、青線、特殊飲食街(特飲)、遊里。色んな言い方があり、何年か前はその違いが全然分からなかったけど、今は結構分かるのですが、あまりそこを明言したくない。一応このブログは純喫茶のブログですし。ジャンル外のことは必要以上に踏み込みたくない。餅は餅屋。解説は専門家にお任せしたいのです。私が書きたいのは無責任な感想だけ。歴史的な背景もぶっちゃけ興味ないですしね(^_^;)。知ることで感想がブレるので、いっそ知りたくない。その場で見た歓楽街ならではの享楽的でキッチュなデザインだとか、そこで感じるオーラを先入観なく素直に書きたいのです。
ダラダラと言い訳を書きましたが、こういうスタンスをご理解ください。
この人気のないひっそりと怪しい雰囲気の太田地区の歓楽街は「銘酒屋街」なのだそう。インスタグラムのコメントで教えていただきました。自分で判断したくはないけど、教えていただけるのは大変ありがたい。なので堂々と書きます。
再び「王将飲食街」に戻ります。
暴力追放はここにもありますね。
「む」の裏側は漢字の「無」。
このシンプルな看板も地味にこわい。人は死ねば無になる。そんな虚無感を感じます。
ここに居るのは私1人。
足元を流れる水の音が絶え間なく聞こえてくるのですが、それがかえって静けさを増幅しています。暑い日でしたが、背筋がゾクゾクしました。
これまで似たような場所は何カ所か訪れましたが、凄みが段違い、強烈なオーラ。本物という気がします。日本中回っても、こちらを超える場所は1つあるかどうか、そんなレベルです。
海から近いのに、観光客どころか地元の人でさえ見向きもしない隔絶されたエリア。現実感のないシチュエーション。白昼夢を飛び越し、美しい悪夢を見ているようでした。
現在は一軒も営業してませんが、数年前までは何軒か営業していた、ということを後から知りました。昭和ならいざ知らず、平成の終わり頃まで現役だった。その事実も今更ながら大いに私をたじろがせます。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
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