扉がまるい鍵穴の形の純喫茶。
愛知県名古屋市中川区東中島町2-81
「名古屋の街並みは魅力がない」と2回続けて書きましたが、段々不安になってきました。
もしかしたら私の目が節穴で、本当は魅力的だったりするのだろうか。
ドキドキしながら中島駅から今回の喫茶店までの街並みを思い返してみたのですが、ああダメです。退屈な景色しか浮かびません。かえってネガティブな印象を補強するだけでした。
名古屋の悪口が言いたいわけではありません。
黙っていれば波風立たないのにわざわざこのような事を3回も書くのは、名古屋には街並みの退屈さに耐えてなお行くべき素敵な純喫茶があるからなのです。
だって、これよ?
本当にこんな所にあるのだろうか……。喫茶店などありそうにもない静かな住宅街に、まるい鍵穴の形の扉が現れたのです。
扉の両脇にはモダンなタイルの装飾までも。
今だから冷静ですが、実物に対峙したときはドアノブにかける手が震えていましたよ。
店内も素敵ですねえ……
モダンで落ち着いた応接間のような空間。ああ来て良かった!
黒い革張りの椅子、天井の照明、カウンターの照明、目隠しにもなる観葉植物、板張りの壁。
一つ一つはどうって事はないのですが、すべてが調和し、寛ぎのある空間を創り上げています。
壁には山の絵がかかっている。何か意味があるのだろうか?
先客は3人? いえ、お客さんは1人だけでした。窓際のテーブル席に3人座っていましたが、私が入店すると、マスターがカウンターに入り、ママさんはそのままお客さんと世間話を続けました。
おしぼりと水。色付きの透明プラスチックトレイに乗ったタオルのおしぼり。
使い捨ての紙のお手拭きの喫茶店も多いのですが、伝統的な純喫茶といえばタオル。火傷しそうな熱く湯気が立つ位が好みです。
おしぼりで手を拭きながらホッと一息。さて、何を注文しよう?
ところが、お店の方から先手を打たれ、「食事はできません」。
見落としてましたが、鍵穴の扉にも「食事できません」の貼り紙。
外で一回、着席時にもう一回。念を押すという事は、食事目的で入ってくるお客さんが多いのでしょう。
喫茶店巡りをしていると、メニューにあっても出来ないものだらけなのが日常茶飯事(笑)
あれも出来ない、これも出来ない、なら何が出来るのか? そこからがスタート。そんな状況に慣れきっている私からすると、事前にこう言われるのが逆に新鮮でした。
基本飲み物だけ。メニュー表はカウンターにかかってるものから選ぶスタイル。
複雑な飲み物(?)を注文してもややこしくなるので、アイスコーヒーを。
食事はなくとも、おつまみは付く。これが名古屋の純喫茶の世界。時にはバナナやゆで卵も出てくる。
チリも積もれば山となる。出されたおつまみを律儀に食べていると、世間一般の食事の時間にお腹が空きません。その代わり変な時間に突如お腹が空きます。
前回の「エリーゼ」でサンドイッチを食べたのも16時過ぎですからね(^_^;)
ああ、そうじゃない。またもや話がわき道にそれてしまいました。突っ込むべきはそこじゃありません。
グラスが可愛い!
扉の形とシンクロした大きなまるの模様。
分厚くて表面に模様が入っててゴツゴツしてるグラス。持ち上げると、ズッシリと重い。大好きです、こういうグラス。
地域性もあるのかな? 名古屋の喫茶店はこちらだけなく、揃いも揃って、この手の分厚くてゴツいグラスが出てきました。逆に可愛くないグラスの方が珍しいくらい。
「古いは古いけどウチは古すぎる」
58年営業。たしかに古い。1960年代前半ですからね。
60年代には流行ったのでしょうか? まるい扉の喫茶店はとても珍しい。外からだとスモークで真っ暗なのですが、内側からだと素敵なステッカーの模様が浮かび上がって、雰囲気があります。
「私らからすると、毎日見てるからどうって事ない」
一点集中。まるい扉に興味津々、そこばかり写真を撮る私の姿は不思議がられました。
喫茶店巡りをする人(自分)とお店の人では温度差があります。ご自身の店の魅力を自覚していて、こちらが魅力に気づく前にプッシュしてくる店主もいますが(メディア慣れしてる店主に多い)、個人的には自覚がない店主の方が好み。分かり合えなくたっていいのです。
扉のわきで揺れる手作りの空き缶アート。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
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