これが最後のつもりで「ケルン」に入りました。
こんな不吉な書き出しは閉店したと勘違いさせてしまうかもしれませんが、ご安心ください。まだ閉店していません(^_^;)。ただ、いつ閉店してもおかしくない古い店です。また、この景色が見られるのは最後となりました。
静岡県沼津市大手町4丁目5-14
7ヶ月後に新仲見世商店街のアーケード屋根は全撤去(2020年10月)。次、沼津に行ったら、「ケルン」の上空には青空が広がっていることでしょう。
ケルン=薄暗いアーケードの喫茶店、で記憶しているので、実物を見たらショックを受けてしまうかも(-_-;)。
一度は「千楽」に行くために、「ケルン」を素通りしています。両隣のシャッターがおりていましたが、あちこちうろついてから戻ってきたら、様子が変わっていました。
「昭和レインボー」という若者向け(?)のレトログッズを売る店がオープンしていました。いつの間に?
たしか以前は老人向け(決めつけ)の骨とう店だったような…。同じアンティークでも、明るくPOPな印象に様変わりしています。賑やかですね……
隣からお客さんが大量に流れてきて、キャッキャした空間になってたらどうしよう…
ここまでは変わってないな。怪しげなアプローチは健在。
中もそのまま。
昭和30年代のお茶の間のような雰囲気は、しっかり保たれてます。障子の奥の和風庭園も健在。物が多くても、汚くなくはありません。
先客はゼロ。心配は杞憂に終わりました。
コースターを敷いた灰皿、竹籠の上で反り返ったタオルのおしぼり。
変わっていないことが、ただただ嬉しい。
いくつか前の記事でも書きましたが、私は古いもの好きでもないし、昭和好きでもありません。そう言い切ることに多少の躊躇はありますが、人から「古いものが好きなの?昭和好きなの?」と聞かれると、居心地の悪さを感じます。たまたま好きな喫茶店が、古くて昭和製なだけなのです。
私の自宅を見たら、皆さん間違いなく幻滅するでしょう。
全然昭和じゃないですから!
だって、昭和そのものを自宅で再現したら、不便で仕方ありません。自分の生活は現代、喫茶店だけ昭和であって欲しいのです。勝手でしょう(^_^;)?
だからこそなのです。自宅とはまったく違う昭和の博物館みたいな喫茶店を訪れると、別世界にトリップした気分になれるのです。非日常感に浸れるのです。
旅行もそうじゃないですか。自宅は快適な方がいいくせに、旅先で便利だとガッカリする。不便なのは、むしろ旅の醍醐味。旅情なのです。喫茶店も然り。
そうそう、昭和30年代のお茶の間と書きましたが、それは私が思い描くイメージ。「ケルン」の創業は、昭和30年どころかもっともっと古い。1935年なんです。昭和10年ですよ。
昭和10年の年季は伊達ではありません。メニュー表にも表れています。
ヰ表記は貴重ですね。十条にあった「スヰング」を思い出します。そういえば、ゑ表記の喫茶店なんて、あるのだろうか。
話が脱線しました。メニュー表記については、もう一つ。ー(音引き)も妙に長くなりですか? バターートーースト、クリーームソーーダと伸ばして発音したくなります。
裏面は? 定食メニューは、フライ、ライス。音引きも普通の長さ。いい加減なのね(笑)。
ソーダ水
緑でホッとしました。この古色蒼然とした空間で、トリッキーな赤や青だったら、飛び跳ねてしまいます。
間に付箋が貼ってあったので、こんな昔の雑誌にも「ケルン」が掲載されているのだろうかと開いてみると、
あなたにピッタリのカレのタイプ
ケルン載ってないよ(-_-;)???
後でネットで調べたら、同じ表紙の雑誌が隣の昭和レトロショップで紹介されてました。お隣のものなのは間違いなさそうです。どういう経緯で、ここにあるのかまでは分かりませんが。
帰りにママさんと少しお話させていただきました。
特別なことがなければ、あまりお店の人とは話さないのですが、冒頭でも書いた通り、これだけの古くて素晴らしい喫茶店は、いつ失われてもおかしくありません。予告なしの閉店は珍しくありません。
この日も、もっと別の入ったことない店に入りたい気持ちをグッと抑え、あえての「ケルン」。滞在時間も短く、実質20分未満。
これまでにも3回訪問してますが、調理カウンターは奥まっていて見えないので、たしか2人ママさん体制だった記憶があります。
「前は2人でしたが、1人になって2年になります」(2020年3月当時の話)
こちらでは料理もしっかり手作りなので、1人で対応するのは大変だと思います。また来たいと思い、営業時間と定休日も確認しました。
8時~16時、定休日は日曜日。やむを得ないと祝日も休む。ただし、こちらも1年前のことなので、もし今もそのつもりで行くと、閉まってる可能性もあります。それでも、せめて沼津に来たら、ほんの少しの時間でも寄りたいと思いました。
後で思い出したのですが、壁に貼ってあったシュールな凧は無くなっていました。
「ケルン」の過去記事→【沼津】喫茶と軽食 KÖLN(ケルン)(1)(2014/06/09)
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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