「純喫茶シェーン」を訪れたのは、雨の日。
静岡県沼津市本下小路町360-1
閉店
自転車で回りました。雨が降るとは知らなかったので。最初はどうも空がスカッとしないなと思いながらも、曇りだから行けるかと走りだしたら、途中で雨が降り出し、どんどんひどくなってくる。仕方なしに、スーパーで合羽を買って、駐輪場で着てから強行突破。我ながらよくやるな、と。
7年近く前、2014年夏の話。
古い喫茶店の特徴のひとつ。
角に建つ一軒家は、角の部分をスパッと切って、ファザードを3面にするのが流行りだったのでしょうか。本当によく見る。小諸の「さかい」とかも。
角の部分がせり出してる感じ、店名も貼り付けてある。
こちらも勇ましく堂々とした縦書きで、「COFFEE SHOP シェーン」。
COFFEE SHOP……
軒下にひっそりと佇むチモトの看板には、「純喫茶」の文字。ああ、素敵。
外観も相当素敵でしたが、店内も負けず劣らず。いや、想像以上!
しっとりと薄暗く、閉鎖的な雰囲気がときめきます。雨の中、頑張って来た甲斐があった。前回の記事で、こちらの店から北上したところにある上本通りが、昔は「シネマ通り」として賑わった、と書きました。映画館が多く沼津華やなりし高度経済成長期を背景に、「純喫茶シェーン」は誕生したのでしょう。また映画館「沼津文化劇場」では、『シェーン』や『大いなる西部』が上映されていたそうなので、映画『シェーン』が店名の由来なのは確実。
奥のさらに暗い席につき、そこから入口の方向を眺めながらコーヒーをいただきました。
お会計のときレジにマッチがあるのを見つけいただき、店内の写真を撮りたいとママさんに言ったところ、きっぱりお断りされました。
すでに天井の照明とコーヒーの写真は撮ってしまいましたが……
写真の話は、できるだけ後に引き延ばしてからするようにしてます。でないと、気まずい時間も長くなるので。実際こちらでも、それまでにこやかだったママさんの表情が一変し、雨の中自転車で来たことすら怪しまれました。「お仕事ですか?」。探偵だとでも思われたのでしょうか。
友人で、私以上に喫茶店巡りをしてる人がいるので、一度聞いてみたことがあります。お店の人から怪しまれることはないか、と。
「全然! それは写真を撮りたいとか言うからじゃない? 私は写真は撮らないから。ただ普通に入るだけなら、むしろ若い人来てくれたと大歓迎だよ」
そんな事もあり、素敵なお店なのだし、もう一度最後まで気持ち良く過ごしたいと思い、私の記憶が消えたであろう数年後に再訪問し、黙って入り黙ってお店を出ました。大満足です。
その後、閉店したと聞きましたが、閉店理由や閉店時期など正確なところは分かりません。
マッチもロマンティックで素敵。
銀色の箱にはクラシカルな飾り模様の凹凸、馬車のイラスト。『シェーン』の世界をイメージしてるのね、と一人悦に浸っていたのですが、後にこのデザインはオリジナルではないことを知りました。札幌市にある「珈琲館 滴」のマッチ箱と激似なのです。マッチ業者のテンプレートがあったんでしょうね(-_-;)。
店を出た後は、再度雨の中自転車を漕ぎ、もう一軒事前に調べていた喫茶店(?)に行ったのですが、中から歌声が聞こえてきたので、そっとその場を立ち去りました。
特徴的な建物は、そこにありました。もしかして、本当は閉店してないんじゃ?
しかし、形こそ同じでも、角のファザードに張り付いていた店名は消えています。いや、待てよ。古い喫茶店では、老朽化して店名がよく零れ落ちています。一文字ないとか、濁点が取れてるとかザラなので。
「純喫茶」の文字だけ残したまま、看板からは店名が消してあります。一縷の望みはすっかり消えてしまいました。
裏が第2駐車場。駐車場だけは機能しているようです。
駅に戻りがてら、商店街を歩きました。その様子については次回から書いていきます。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
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