とある平日の夕方、溜池山王でビル地下の純喫茶を回った。
いずれも竣工が1966年あるいは1967年。高度経済成長期に誕生し、半世紀を経た歴史あるビルである。
所在地:東京都港区虎ノ門2丁目2番5号
竣工:1966年3月
所在地:東京都港区赤坂1丁目9番13号
竣工:1967年2月
所在地:東京都港区赤坂2丁目3番6号
竣工:1966年3月
特許庁前の信号からわき道(?)にそれると、視線の先には太陽の光を反射し輝くビル。
その名も共同通信会館。
新聞でよく見かける、あの共同通信ね。ただ当の共同通信社は現在ここにはありません。
元々は1966年に共同通信の本社ビルとして建築し、長い間こちらに本社がありましたが、2003年に汐留メディアタワーに移転。その後オフィスビルとしてリニューアル。
とはいえ、共同通信はいなくなってもお堅いことには変わりなくて、ビルの入口には「国立印刷局」。
中曽根元首相死去の速報が貼ってあったり、いまだ新聞色が強い。
テナントとして、北海道新聞東京支社も入ってる。
なんでよりによって地方新聞なんだろうね? 共同通信のビルだったら、大手三大紙がこぞって入居したがるような気もするけど、そこは抜け駆けするのはなかなか難しかったのかしら(大人の事情とやらで)?
だけど、そんなお堅いビルにも地下に飲食店がある。コンビニや歯医者にまぎれて、これから紹介する喫茶店「カフェ・ライム」がある。
ただね、どうも店名がピンとこない。だってカフェだよ?
ブレンドコーヒー400円(サイフォン)
あれ? しっかり純喫茶だよ。
いくぶん狭いかな、という気もするけど、適度に薄暗いし、天井はRになってて斜めの梁が個性的。もちろん立地萌えフィルターが働いてることは否めないけど、それでも良いのではないでしょうか。お値段も良心的で、コーヒーも美味しい。
先客はキャピキャピした若い女子2人。てっきり報道関係者の客ばかりで肩身が狭いかと思いきや、全然気にすることはなさそう。
店を出てからナポリタンの食品サンプルの写真を撮っていたら、マスターが出てきて、「取材ですか?」と聞かれた(笑)。
「虎ノ門病院関連のお客さんが多いんですよ。こちらに掲載されてますので」と虎ノ門病院広報誌を渡された。
そう、溜池山王と書いてるけど、こちらは虎ノ門からも近い。
サイフォンコーヒーとバナナジュースがお勧め。
店の前は休憩所スペース。真っ白な椅子とテーブルが並び、それぞれのテーブルには、ライム特製バナナジュースのテイクアウトキャンペーンの広告が置いてあった。MAX19席というキャパを考えると、割引してもたくさんのお客さんにテイクアウトしてもらった方が、メリットあるのかも。
共同通信会館の向かいには三会堂ビルディングがある。
「地下商店街入口」の案内。
共同通信会館はあっさりしててビル鑑賞の楽しみは少ないが、こちらは見所満載。ウットリするほど美しい曲線、壁面のタイルの装飾。エレベーターホールも必見。
閑散とした商店街は、なんだか病院みたい。
とんかつうえはらの隣の北欧カフェ風の白いドアがあり、「コーヒーデリバリーのみの営業になりました」という貼り紙。
こちらは2016年3月末に閉店した「喫茶琥珀」の跡地。
壁には貝殻を敷き詰めた純喫茶度の高い素敵なお店だった。隙間から中を覗いてみたけど、面影はありません……。
【関連記事】
【溜池山王】喫茶 琥珀(2016年3月末閉店)
閉店後の家具は村田商會さんで販売されました。
最後に訪れたのは、溜池山王駅直結のコマツビル。
三会堂ビルもだけど、この辺では「地下商店街」の表記が人気みたい。商店街って、普通街中にあるものじゃないの? ビル内だと「地下飲食店街」の方が馴染みがある。
建物の外壁は白亜の大理石。窓は横長の六角形。
コマツビルは建設機械大手の小松製作所の本社ビル。ショーケースにはブルドーザーのミニチュアが飾ってある。
首都高(六本木通り)と外堀通りに面しており、入口も2箇所。首都高側の方が入りやすいけど、今回は外堀通りの正面入口から入った。守衛さんが居るので、初めてのときはビクビクしたが、別になんてことはなく慣れれば平気。
こちらから入ると、商 店 街 も見れる。
一文字一文字独立してるのが、昭和っぽくてグッとくる。
緑色がかかって独特の模様のある壁は高級感がある。これ、なんだろう? 大理石かしら?
調べてみたら、パキスタン産のグリーンオニキス。外壁も大理石だし、お金は相当かかってると思う(笑)。
しかし、そんな宝石みたいなビルの地下にある商店街は、すっかり寂れきっており、現役で営業する飲食店はこれから紹介する「シーザー」1軒だけ。
どう? この侘しいムード。
実は私は、この閑散とした寂れた雰囲気がとても好きなのです。同じくビジネス街の新橋のニュー新橋ビルや新橋駅前ビルの喫茶店よりも好き。新橋の先の2つよりも純喫茶好きがそこまで注目してないからか、純喫茶巡りの人とはまず出会わないのも理由かも。
場所柄小松製作所の社員食堂と化しているので、ランチタイムは戦争。満席で落ち着けるとは言い難い雰囲気だが、それを外し朝や夕方訪れると静かな時間が過ごせる。
今では出せない色褪せたメニュー看板も素敵。
店内は2手に分かれており、入口も2つある。
明るく食堂的な空間と、暗くて純喫茶な空間。もちろん後者の純喫茶の方に座った。
こちらは何を食べても美味しいが、今回は前から気になってたシーフードチーズ黒カレー。
真っ黒でインパクトあるでしょう?
これが滅茶苦茶美味しい! コクがあって、イカ、エビ、ブロッコリなど具だくさん。これは純喫茶じゃなくて、ちょっとしたレストランレベルだよね。
ただね、量が多すぎるかな。少し残してしまった。
ビートルズの流れるまったりした空間で食後のコーヒー。
以前は19時頃までだったが、現在は18時までになってしまったので、行きにくくなってしまった。
【関連記事】
【溜池山王】コーヒー&スナック シーザー(1)
【溜池山王】コーヒー&スナック シーザー(2)
国会議事堂や首相官邸がある政治の中枢という立地柄、新橋などと比べるといかがわしさや俗っぽさとは無縁で、入るときに少し緊張した。
それでもSPの人があちこち立つ国会記者会館に入るときの緊張感よりはマシだったと思う。一回目はビビッて入れなくて後日出直したくらいなので。その国会記者会館にあった「喫茶やま」も閉店してしまい、この辺で入れるビル喫茶は少なくなってしまった。
今回報告した共同通信会館の「カフェ・ライム」も、コマツビルの「シーザー」も入ってみれば、ごく普通の喫茶店と変わらず、お店の人も気さくで、外とのギャップが面白い。こんな非日常が味わえるのも、この場所ならでは。シーザーは都心の中でも特に好きな喫茶店で、ここがなくなったら溜池山王に行く理由がなくなってしまうかも。これからも長く続いて欲しい。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
コメント
匿名さん
通信社からの配信記事がないと紙面がガラガラになる地方紙も珍しくない。
その他、雑誌を刊行する出版社(記者クラブに出版社が参加できないことが大きい)、一部の自治体や中央官庁、商社なども配信を受けていることがある。
2020/01/20 URL 編集
blackcoffee1964
「琥珀」懐かしいです。一度、最奥の席に座りたかったです。
「シーザー」は右と左で全く違う内観なのが、珍しいですよね。
私は右側の暗い方しか入った事がありませんけど。
シーザーのマッチを書いた事があったので、リンク貼っておきますね。
http://blackcoffee1964.blog.fc2.com/blog-entry-92.html
2020/01/22 URL 編集
エムケイ
最奥の席は桃源郷でした。
「シーザー」は随分前に箱とブックマッチ両方もらってしまったので、もうマッチあるのか聞きませんが、まだあるのかな?
ブログの記事拝見しました。
「シーザー」もですが、一緒に載せてた吉祥寺の「シェモア」のマッチ羨ましい!
私は持ってないんですよね。
いつか村田さんのところで買ったシェモアのカップ&ソーサーと一緒にマッチの写真を並べて撮ってみたいです。
2020/01/22 URL 編集