ミルクホールが誕生したのは明治時代。当時はミルクを飲ませる軽飲食店だった。
このへんの説明は少々歯切れが悪くなる。というのも、大正中期までの最盛期も、ミルクホールが気軽な喫茶店のような存在になっていった昭和初期も、私はリアルには見ていないのである。専門家とされる方の書籍やネットだけが頼りで、ぼんやりとした霧の中で、こうじゃないかなあ…とおそるおそる書いている。
それらの伝聞情報を基に得た付け焼刃の知識から判断すると、現存する数少ないミルクホールを掲げる店は、すでに本来のミルクホールとは大きくかけ離れている。
今回紹介する「栄屋ミルクホール」も同様で、現在ではラーメンが中心の食堂。
東京都千代田区神田多町2-11-7
2021年10月8日閉店し、下記住所地でオープン
→移転先: 東京都千代田区神田多町2丁目2
ラーメンか……。
訪問するタイミングが難しい。
栄屋ミルクホールの営業は、平日のみで夕方5時まで。これがすでに高いハードル。しかもお腹が空いていて、なおかつラーメンが食べたい気分のときとなると、限られている。
ここで好機が訪れる。自慢になりそうなので大きな声では言えないが、職場がプレミアムフライデーを導入したので、平日のみ営業の店に行けるようになった。やったね!
本来のミルクホールかどうかなんて実のところどうでもよくて、私がこちらに興味を持ったのは建物の魅力が膨らませてくれたイメージ。年季の入った銅板建築の端っこが店舗になっているが、赤・白・緑のコントラストが美しい。
白の暖簾がまばゆい。
背もたれのない緑のパイプ椅子が昭和の食堂風であるが、手入れが行き届いていてとても綺麗な店内。
すでに先客で席が半分ほど埋まっていた。意外!
壁には短冊のメニューが貼ってあるが、基本ラーメン中心。カレーライス、冷やし中華、おにぎりも細々と紛れている。
テーブルに置いてあるものもラーメン関係。胡椒が2つもあるが、これは同席した人それぞれ使う用かしら?
先客は全員ラーメン食事中。もちろん私もラーメンを注文。
う~~~ん、いいねえ! 期待通りの昔ながらの醤油スープのラーメン。
具もシンプルに、チャーシュー、メンマ、ほうれん草、ネギ。
ビックリ仰天とか新たな発見は少しもないのだけど、ラーメンで一々驚きたくもないし、食に関しては意外に保守的な私にとっては、まさに理想なラーメンだった。美味しい。
金額は620円と若干高い気もしたが、巷には余裕で1000円近くするラーメンもあるので、都心という立地を考えると妥当な金額なのかもしれない。
面白いのはお会計。先客の全員が全員1120円を出し、その都度「500円玉がないから」と店のご主人に断られ、その都度100円を引っ込めていた。
なので私もそれにならい、1020円を出して400円のお釣りをもらった。
帰り際に少しだけご主人からお話が聞けた。
創業は昭和20年(1945年)。以前は夏にはかき氷、冬にはお雑煮、お汁粉なども扱っていたが、コンビニの普及により注文する人が少なくなり、ラーメンブームもありラーメンで忙しくなり甘味はやめてしまったという。前はかつ丼もあったらしい。
エムケイ
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コメント
norakuro
プレミアムフライデー導入!いいですね!
大きな会社にお勤めなんですね。。ウラヤマシイ。。。
2017/07/07 URL 編集
chariot
本来の「ミルクホール」の面影を残すのは、白い暖簾くらいではないでしょうか。
今も、お釣についてはうるさいようなので、ほほえましく思いました。
2017/07/08 URL 編集
エムケイ
プレミアムフライデー導入してくれて嬉しいです。でも大きな会社ではないですよ、むしろ小さい。色々よくしてもらってます。
2017/07/09 URL 編集
エムケイ
とても面白かったです。お釣りの件は当時からだったのですね(笑)。
「教育的指導」という表現が好きです。
こちらは「ミルクホール」の面影は白い暖簾だけ。本当にその通りだと思います。
ミルクホールが喫茶店のような存在に変わり、その後さらに店ごとに変化を遂げていったことからすると、おそらく純喫茶も同じ運命をたどるのではないかと思わず考えさせられてしまいました。
2017/07/09 URL 編集