東京駅の近くに純喫茶はないか?
そう問われると私は黙り込んでしまう。近年再開発で日本橋、京橋の純喫茶がバタバタと閉店していき、櫛の歯が欠けたようにスカスカ。その生息地も放射状に外へ外へ移動している。
冒頭の質問の返答として、宝町の「喫茶 Q」を挙げたい。
東京都中央区京橋3-12-5 タルタニビル1F
東京駅の近くとして宝町は少し強引かもしれない。けど、多治見ではこれよりももっと歩いたぞ、とまたも強引。
消防署の向かいにある。
自販機の奥に引っ込んでおり、看板が出てないと、四六時中純喫茶のことばかり考えてる人以外は見逃してしまう、ひっそりとした外観。
もちろんドアはお約束の中が見えないスモーク。
ドアを開けた感想。狭い。
中が見えない純喫茶のドアを開けるのは、今では平気になった。だが、店主との距離が近すぎる狭小店は未だに少し緊張する。
他にお客さんがいないのは幸運なのか、はたまた店主と1対1の息詰まる空間を過ごすのか。はたして?
「どなたかお待ち合わせですか?」
このいかにもひっそりとした、おそらく常連率ほぼ100%のごじんまりした純喫茶では、私のような一見客の存在自体が珍しいのだろう。
いえ特に、と答えると、どうぞこちらの席へとハキハキと明るい口調で入口付近のテーブル席を勧められた。第一関門クリア。
カウンターに目を遣ると、「本日のおススメ レモンスカッシュ750円」。うわっ!高い。えーどうしようと迷っていると、メニューが渡された。
こちらも全体に高め設定。一番安いのがブレンドコーヒー500円。立地柄仕方ないのかもと諦め、2番目に安いアイスティー550円を注文。
むむっ!美味しい! 紅茶の葉の味(?)がする。そういえば火にかけている音や氷をカツンカツンと割っており、きちんと淹れているようだった。少しお値段高めだが、これには納得。
*
マスターは気さくな方で、お会計時に「うちの店入りにくいでしょ?」と話しかけられた。
創業43年。この辺りも昔は喫茶店が多かったが今ではほとんどないこと、昔は夜10時くらいまで開けていたが今では人自体が歩いていないので夜6時で閉める、と。「ただ、どんなにお客さんが来なくても6時までは必ず開けている」ということ。なかなかそうハッキリ言い切る店は少ない。頼もしい。
入店し真正面に目にとまるのは、「Q」の額縁。その世界では有名な方がデザインしてくれたもので、大変価値があるらしい。時折デザイン関係の仕事をしている人が見にくるとのこと。
「なんだか気球みたいですね」と言うと、人によっては「ちょんまげのお侍さんの頭を上から見た図」にも見えるのだそう。そう言われてみればなるほど。段々とちょんまげに見えてくるから不思議だ。まるで心理テストみたいだ。
店名のQの由来だが、マスターのご兄弟が寿司店を営んでおり、「寿司キュー(寿司Q?)」という店名なので屋号を合わせて「喫茶Q」にしたとのこと。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
コメント
カカポ
2015/06/16 URL 編集
エムケイ
その後リリーには入られたのでしょうか。
>贅沢なブログです。
そういっていただけるととても嬉しいです。
ありがとうございます。
2015/06/18 URL 編集
ヤマザキ
去年1年忙しく、なかなか純喫茶巡りの時間がとれず、ブログもしばらく拝見しておりませんでした。
最近また拝見し始めたところ、魅力的な記事がたくさんアップされていて、つい…
Qですが、職場の近くなのですが、お昼に歩いて行くには少々遠く、過去2度しか行ったことがないのですが、もうあの隠れ家感、すごく興奮しますよね!
シンプルを通り越し簡素(失礼)な店内に、燦然と輝く「Q」の文字、それだけで映画1本撮れるんじゃないかと思うくらい強烈で、忘れられない店です。
半年ほど前に伺った時、制服姿のOLが一人でナポリタンなど注文して食べていたのがかなり浮いていたのだろうと思いますが、お店の方(マスターのお嬢さんでしょうか?素敵な女性でした)が「この店、入りにくいでしょう?」と話しかけて下さり(エムケイさんの時と同じですね笑)、マスター含め少しお話しをしました。
やはり、近辺の喫茶店はどんどん閉店しこの界隈ではウチだけになってしまった、潰したくないのでまた是非来てやってくれ、といったようなお話でした。
いただいたナポリタンは、ちょっと黒くなる程かなり強めに炒めてあって、なかなか美味しかったです。
東京駅付近の喫茶店問題ですが、エムケイさんも行かれた「バロック」、恐らく閉店か移転したようです。
年末にたまたま店の前を通ったところ、謎の居酒屋になっていました…かなりショックでした。
宝町にも、「森屋」「ばらーど」等、魅力的な喫茶店があったのですが、どちらも閉店(「ばらーど」は移転との貼紙がしてありました)してしまい、悲しい限りです。
特に「森屋」は店自体も美しかったのですが、お店のマダムがとっても気さくな素敵な方で大好きだったので、残念でなりません。
残る日本橋「ロータス」には、是非頑張って欲しいです。
2016/01/19 URL 編集
エムケイ
マスターのお嬢さんらしき女性もいらしたのですね。
年末に神田~大手町~東京駅~宝町~八丁堀~茅場町と散策しましたが、そのとき離れた位置からQの看板を確認し、ああ営業しているとホッとして先を歩きました。
その後、同じく宝町にある「かうひいや亜珈」を探したのですが、該当する住所には見つからず。
閉店したのでしょうか。
「森屋」「ばらーど」はどちらも未訪問です。
都内でも距離的に近くても、行きにくい場所はいつまでも行かないままです。
そういえば、八重洲北口にあった「小さな喫茶室 三つ扇」ですが、何年か前には「暫く休みます」の貼り紙がありましたが、年末には無くなってました。
営業再開したのか、閉店したのか。
そばの不動産屋に聞こうかと思いましたが、入りにくくてやめました(^^;
日本橋のバロックは謎の居酒屋に変わってましたか。
閉店でしょうか。残念です。
ロータスには頑張って欲しいですね。
2016/01/22 URL 編集
ヤマザキ
返信、ありがとうございます。
ここに何度もは・・・とも思いましたが、もう少しだけ。
「かうひいや亜珈」、少し調べたら、思い出しました。
ここは、ビルの建て替えか何かと同時に、閉店(移転?)したかと思います。恐らく3年くらい前かと。
昔、この店が入っていたビルに取引先の会社があり、打ち合わせの帰りに一度だけ寄った事がありました。
私が純喫茶を巡るようになる前の事で、あまり覚えてはいないのですが・・・
「三つ扇」はとても気になっており、近くを通るたび、再開しないかな、と様子を伺っていましたが、紙、無くなっていましたか。
通りかかるのはいつも暗くなってからなので、今度明るいうちに行ってみます。
またご報告します!
2016/01/25 URL 編集
エムケイ
3年位前にビル建て替えで無くなってたのですね。
とりあえず散策するときは、喫茶店と名のつくものは見に行くようにしています。
入店するかとなると別問題ですが。
都心部を細々回っていると、すでに閉店しているのか、営業時間外は気配を消すタイプ(純喫茶にはよくあるのです)なのか判断に迷うケースがあります。
今は無いということだけでも知れてスッキリしました(でないとまた探してしまうので)。
「三つ扇」は本当に気になりますよね。
東京駅のそばであの堂々たるひっそり具合が純喫茶好きの心をとらえますよね。
2016/01/26 URL 編集