富士宮と聞いて思い浮かべるもの。
筆頭はB級グルメ「富士宮焼きそば」。そして、世界文化遺産「富士山」。さしずめ、こんなところでしょうか?
……いや、まだまだ。というか、富士山、焼きそばなど綺麗さっぱり忘れていい。富士宮には超ド級の素晴らしい純喫茶がある。もう純喫茶遺産に認定したいくらい。
昭和35年(1960年)創業。50年以上の老舗。その名も「らんぶる」。
静岡県富士宮市大宮町17-14
今年に入ってからJR東海道本線を順調に西へ西へと進んできたが、それを阻むもの。それはわき道。
富士宮はJR身延線。富士駅と甲府を結ぶ路線上にある。乗り換えの都合も考え、今回、高速バスを使った。東京駅から渋滞に巻き込まれ3時間かかったが、車内ではすっかり熟睡し、目覚めたときには富士宮駅。結構便利。
「らんぶる」までは徒歩で5分強。立地は抜群。
遠くからでも異彩(オーラ)を放っていた。キッチュというかサイケデリックなその姿。外壁を覆う、無数の向日葵らしき絵。間違いなく大当たり!
残念なのは、形跡は残っているが、庇がないこと。もしや2月の大雪のせい?
店の脇は駐車場になっているが、側面にはこのような!
右肩上がりに斜めなL'ambreがえらく恰好が良い。他店を見ても、「らんぶる(ランブル)」は絶対外さない鉄板ネーミングである。ちなみにL'ambreはフランス語で琥珀を意味する。
「創られるコーヒー芸術」というキャッチコピーも印象的。
インディアン少年はここでも健在。静岡県に入ると、トミヤコーヒーばかり見かける。
期待に胸ふくらませドアを開けた。
おおおお……。いまだ純喫茶の良き時代が残っていようとは。
まずは外からもチラチラ見え隠れし、気になっていたこちら。緑、黄、オレンジの3色の正三角形のオーナメント(?)が天井から降り注ぐ。
す、すごい! 思わず息を飲んだ。
だが、らんぶる富士宮店のすごさはこれだけでは済まなかった。
壁にもお揃いの丸いライトが付いている。
私の表現力というか語彙が拙くて申し訳ないが、ミッドセンチュリー?近未来? あるいは、今まで使ったことないし、本来の意味をしっかり理解していないが、スペーシー(?)とでも言うのか。
他のインパクトが大きいので、天井のシャンデリアはもはや脇役。
しかも、まだまだ素敵なものがあるのだ。
モザイクタイルの装飾。お見事!
素晴らしさに圧倒され、ただただため息。
カウンターも。最高!!!
あと、ここには載せないけど、トイレも必見。手作りのペーパーフォルダーが力作。
あゝ素晴らしい。感動で3時間の疲れが吹っ飛んだ(寝てただけだが)。
さて、席を決めよう。奥に座るか、入口に座るか。奥は明らかに薄暗いので入口に決めた。あと、入口付近から奥を見るか、外を見るか。これまた重要。そういう細かい計算を瞬時に行った。
最終的には「入口&奥を見る」を選んだ。
ここまで入店からものの1分位の出来事である。(感動と煩悶が渦巻き、体感的には長い時間に感じたが)
壁にメニューが貼ってあったので、ナポリタンを頼んだ。お腹が空いていたので。
「すみません。食事は今できないのです。トーストくらいならできますが」蝶ネクタイをしたマスターが申し訳なさそうに言う。
そのやり取りを聞いていた先客が「ごめんね。シェフが入院しちゃてるから」
ここで状況を整理しよう。登場人物は4人。カウンターにマスター、先客2人(年齢差ある2人。テレビで野球を見ている)、そして私(こそこそと物陰にひそむ)。
声をかけてきたのは、先客のうち年上の方。
シェフ? よく分からないが、まだ深く突っ込む段階ではない。「はぁ…」と軽く流し、トーストとコーヒーを注文した。
嬉しいロゴ入り。ランブルのイニシャル「L'」。なんとも粋なデザイン。カップ、ソーサー、トーストの皿すべてに同じロゴが入っている。
コーヒーを一口。
どっしりして濃い。やはり思った通り美味しい。
ここは、姉妹店「サボイヤ」で教えてもらって来た。
あちらのメニューはブレンドコーヒー一本。ただ、そのコーヒーはどっしりして濃く、非常に美味しい。実はいくら喫茶店めぐりをしていても、コーヒーの微妙な違いはほとんど分からない。分かるのは、圧倒的に美味しい場合のみだが、サボイヤのコーヒーは圧倒的に美味しかった。
そこの伝票にいくつか姉妹店の記載があったが、訊くことによると、ほとんど今は営業していないが、「富士宮はやってるらしい」。
その言葉がキッカケで後日訪問したのだった。
経緯をマスターに話した。ここで知ったのだが、先客2人のうち、「シェフが~」の話をした方はここの社長。もう一方こそ常連のお客さん。
私の熱意にほだされたのか(?)、これまで気になっていたカーテンの奥を見せてくれた。
普段使わないので閉めているが、50人位は入るそう。しかも、昔はここに池があったのだとか。
ここから店内を見渡すと、かなり広いことが分かる。
興味のある方もいるかも。スチール棚には多数の飛行機のプラモデル。
これまでお店の方とは話し込むことはあったが、今回常連のお客さんとかなり話が弾んでしまった。(話してる最中、後からもう1人常連さんが加わった)
純喫茶の役割は美味しいコーヒーを飲ませることというより、寛ぎの場、社交の場としての役割が大きいと思っていたので、コーヒーの味をさほど重視していなかった。
ところが、常連のお客さん2人によると、「ここのコーヒーを飲んだら、他の店では飲めない」というほど、らんぶるの珈琲に惚れ込んでいることが伝わってきた。そういえば、姉妹店のサボイヤもそんな感じだった。
作り置きではなく、注文を受けてから一杯一杯入れているのだという。
常連さんはなんでも知ってた。昨年11月までインベーダーゲームが1台あったが、静岡ローカルTV番組『しょんないTV』に寄贈してしまったということも。
「しょんない」は静岡の方言でしょうがないの意味。これまた常連さんから教えてもらった。
そして、シェフのことも。ママが料理担当なのだが、現在入院中。カレーライス、オムライスなんでも食事が美味しいから、ぜひ一度食べに来てほしいと。
また来たいと強く思った。東海道本線西へ西へも続けるが、いつか時間を作って身延線純喫茶巡りもしよう。
富士宮駅周辺では純喫茶はここ以外ほぼなくなったそうだが、迷わず断言できる。ここ1軒だけのために富士宮まで来る価値ある名店。
(実は富士宮ではもう1軒行く予定だったが、結局、満足しきって行かなかった。)
コーヒーショップ らんぶる (L'ambre) マッチ (2014年)
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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コメント
とおりすがり
2017/04/15 URL 編集
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2017/04/15 編集
エムケイ
2017/04/16 URL 編集