【網代】you（閉店）

実を言うと、網代で降りるのはギリギリまで迷った。

理由は伊東線の本数の少なさ。下手をすると、1時間近く待たされることもある。

この日は、伊東でじっくり純喫茶巡りをするつもりだった。冬は日が暮れるのが早く、残された時間はそれほど多くはない。このまま余計なことを考えるのは止めよう。変に色気を出さず、予定通りに、計画通りに、伊東まで行こう。

けど、この機会を逃すと、次はいつになることやら…。思い切って、網代で途中下車。

駅前には、２軒の純喫茶が並ぶ。「かぼちゃ」と「you」。

どちらに入ろうか迷い、少しだけ奥まった、控えめなyouに入ることに。

ユーも小文字でyouなのが好ましい。

このインディアンキャラのトミヤコーヒーの看板。静岡県に入ると急激にあちこちで見かけますね。

ドアを開け、一歩足を踏み出すと、そこはめくるめくノスタルジー溢れる純喫茶空間。

一瞬、我を失うところだった。

少しして、奥からマスターが登場し、電気をつけてくれた。

他から区切られてる空間が落ち着けそうなので、そっちへ。

外が見える、窓際の席に座った。

レースのカーテンを通して光が差し込み、黄金色の影を落とす。なんだか麦畑みたいだと思った。実際に麦畑を見たことないけど。

「飲み物しかできないけどいいですか？」

まったく問題なし!

いいですよ、なんだって。いっそ水だけでもいいですが？　呆けながら、コーヒーを注文。

座った席から中央を眺めると、気になるものが。鎖？　緑と黄色の鎖が垂れ下がっていた。実用性はおそらくない。

壁には、海を走る船の絵。

思わず立ち上がって、背後の壁を見ると、こちらにも船の絵。

日焼けなのか、元からなのか、褪せたブルーのトーン。思わず吸い込まれてしまった。

コーヒーが出てきた。味、どうだろう？

頼んだはいいけど、酸化してすっぱかったらどうしよう。量多いし。残すのもイヤだし。内装が超絶好みの純喫茶度の高い喫茶店ほど、コーヒーが酸化してすっぱいこと多いのよね…。

ところが、覚悟していざ口をつけると、予想に反して普通に美味しい。純喫茶巡りはこれだから面白い。悪いほうに裏切られることもあるが、良い方に裏切られることもある。

そして、悪いことはサッサと忘れ、ひたすら良いことだけを積み重ねる。「純喫茶は素敵」だと思えれば、勝ち組である。とすると、私も勝ち組？(￣ー￣)

……と、ここで一気に話題を変えて。

あえて触れずに来たが、気付いている方はとっくに気付いているでしょう。

薔薇模様の腰壁。

なになになに～!? こんなの初めて見た!!!　素敵～～～～!!!!　心の中で大絶叫。現地で、この感動を誰とも共有できなかったのが残念すぎるので、画面を通して純喫茶好きの貴方と喜びを分かち合いたいと思います。

ゲーム機テーブル自体は純喫茶ではありふれてて、最近では「座りにくい」という理由で、滅多に座らなくなっているけど、乙女な薔薇模様を背景にした、ゲーム機のなんと素敵なことか!

多人数対応席もある。マルチストライプの背もたれが偉くカッコイイ。テーブルは年季の入ったゲーム機。

ここで、団体席なのにゲーム機？　ゲームは1人しかできない→ゲーム中は飲み物・料理は置けないじゃないか？→ダメじゃん
…と怒る人は負け組かもしれませんよ。　(￣∇￣+)

はっ!!!　ここで、余計なことに気付いてしまった。
「ゲーム機は足があたって座りにくい」
最近、ずっとそう言ってる。
…とすると、私も負け組？　(ﾉﾟοﾟ)ﾉ

ごめんなさい。勝ち組も負け組も、純喫茶ファンにそんな区別をする私が間違ってました。反省。

なにはともあれ、網代のyouは本当に素敵な純喫茶だった。入って良かったと、心からそう思った。

気付いたときには、電車の発車時刻の15分前。これを逃すと次は47分後。そろそろ店を出よう。