カウンターに座るのは、いまだ緊張する。できたら避けたい。無意識にテーブルを選んでしまう。
それは私が純喫茶においては、いつまで経っても慣れず、落ち着いたかと思えばまたもや彷徨う、異邦人だからかもしれない。
高円寺には喫茶店が多い。大抵は入っているが、気付くと、カウンター中心の店だけ残っていた。
庚申通りからわき道にそれた「珈琲 コーラル」も、そのタイプ。入りにくかった。というか、入ってもよいのか?
杉並区高円寺北2-38-13
珈琲専門店コーラル
初めて入ったのは、昨年夏の終わり。店内の空調はあまり良くなく、蒸し暑かったが、今にして思えば、あの暑さが恋しい。
一応、テーブル席もあるが、
メインはやはりカウンター。
テーブルは埋まっていたので、カウンターへ。
いかにも高円寺風な若いお兄さんがカウンターに座っていたが、席を1つズレてくれ、奥のテレビの近くに座ることができた。
必見なのはメニュー。
マダムが書いた手書きイラスト入りで、眺めているだけでも癒される。
食事メニューも豊富で、喫茶では珍しいものもあった。「ソーセージのからし醤油」(だったかな?)といった、その名の通りのイラスト。ビールのおつまみに良さそう。
色々と目移りするが、ここでは何を頼むか決めていた。
ホットケーキである。
(純喫茶にぃさんのブログを参考に訪問)
純喫茶に関してはストライクゾーンが広い私だが、ホットケーキに関しても同様。こうじゃなきゃ!というこだわりがない。美味しければ何でもよい。それよりは、その日の気分次第である。
コーラルのホットケーキは、いわゆる見目麗しいキツネ色、ではなく、イワタ珈琲のような厚みがあるもの、でもない。
家庭で作ったようなぽってりしたまあるいホットケーキ。たまご色の黄色いホットケーキ。そして、大きい。
若干垢抜けしないビジュアルのホットケーキだが、
私にとっては、「ちびくろサンボのホットケーキ」なのだ。
子供の頃、私が憧れた、絵本の中のホットケーキ。銅板で焼くなんて、そんな高級なものではなく、家のフライパンで焼いたホットケーキ。焼色なんてなくて黄色くて…。
虎が木の周りをぐるぐる回りバターになり、そのバターで大量のホットケーキを焼いた。ちびくろサンボが山盛り食べるシーン。ご存知だろうか? あれなのだ! あの虎のバターで作ったホットケーキのイメージ。
THE ちびくろサンボのホットケーキ
「バターを塗ってからシロップをかけてくださいね。食べきれなかったらパック詰めしますよ」
ナイフで豪快に大きく切り、シロップをたっぷりとかけ、口いっぱいに頬張る。ちびくろサンボのホットケーキの味かどうかは分からないが、子供の頃に食べたオヤツの味。
1枚でも、軽く通常の2枚分はボリュームがあり、3分の1は食べきれず。遠慮なくお持ち帰りにしてもらった。
コーヒー豆を挽いている場面を目撃。挽きたて、淹れたて。美味しい!
ふと気づいた。
全然緊張してない。1つ椅子を挟んで隣の高円寺兄さんも、スマホを軽快にスクロールしながら、一人の世界に籠り、テーブルでは地元高円寺マダムが隣のお客さんと話しこみ、ママさんの合いの手がそこに加わる。
私はといえば、窓際に置いてある、茶色く変色した、昔のグルメ情報誌をペラペラめくった。小さなテレビで流れるニュースをBGMにしつつ、コーヒーを飲む。
「マッチはないけど、代わりに…」と差し出されたのは、コースター。
小さな正方形に、小さな喫茶店の、あったかく、明るい魅力がギュッと詰まっている。これぞオリジナル100%のコースター。
壁に原画が飾ってあった。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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