茨城県日立市純喫茶めぐりの締めは、上野。
「純喫茶 丘」に行こうとしたら、もう閉まってました。そこで、久しぶりに、「珈琲 王城」へ。
東京都台東区上野6-8-15
入る前に、違和感を感じた。
王城といえば、ムンムンした紫の看板が印象的。
3つ揃って、こういう外観だった(1年半前)。
それが、いつの間にやら、看板の1つが紫じゃない!!! 説明的で、上野らしき猥雑さを排した、無難な色彩のものに変わってました。
日暮里「ニュートーキョー」のギラギラネオンがなくなり、ネットカフェ的外観になった、あの苦い記憶がよみがえりました。新しくなると、大抵味気なくなるのは、世の常でしょうか?
天井のシャンデリアは外からも見える。
椅子はゴブラン織り(?)みたいなゴージャス模様。
有名すぎる純喫茶なので、内装に関する描写は、この位にしておきます。
さて、今回注文するのはナポリタン。
申し訳ないが、あまり期待していなかった。
けど、目の前に出てきた実物を見て、あっ!これは王道系!
ぶっとい極太麺は、「純喫茶丘」並。アルデンテとは無縁の、昭和喫茶のナポリタン。これは当たり! 肉厚のマッシュルームもゴロゴロ入っている。
味付けも王道。ただ、他では経験ない「ねっとりした」隠し味?が美味しい。ねっとりの正体は不明。
上野界隈には、「高級喫茶古城」「純喫茶丘」「ギャラン」「マドンナー」といった、ゴージャス系純喫茶の宝庫。それぞれ個性があります。
ゴージャス度合でいえば、王城は他の大物より控えめだが、コーヒーの提供スタイルに関しては最上級。
まずは、伏せた空のカップが出てきます。
ピカピカの銀器も一緒に。シュガーポット、ミルクピッチャー、そしてそれを乗せるトレイ。
うっかり自分の顔が写りこんでいやしないか確認しながら撮影。
少し待つと、パリッとした白シャツ姿の店員さんが、目の前でコーヒーを注いでくれます。ポットもピカピカの銀。この一連の動作混みで、ゴージャス気分が味わえます。
ここだけの話、純喫茶は、その古さゆえ、店内が荒れ果てて、思わずビックリ!なんてことも稀にあります。もちろん、それが持ち味になることもあるのだけど、純喫茶慣れしてない人にはうかつに勧められません。
その点、王城は問題なし。昭和レトロな雰囲気はしっかり残しつつも、すっごく綺麗。
それもそのはず。店員さんが、少しでも時間が空くと、椅子に刷毛をかけたり、テーブルや窓を拭いたり、店内の清掃に余念がない。大阪・阿倍野の「純喫茶田園」を思い出します。赤いドレス姿の店員さんが絶えずどこか磨いていて、ピカピカだった。
強いて難を言えば、もう充分すぎるほど綺麗なので、目に付く範囲は掃除してくれるな!ってとこかしら?
いずれにしても、ボロい、汚い、といったマイナスオーラは一切ない、現代スタイルの純喫茶であります。
ただ、生き残る上で仕方ないことなのだけど、現代スタイルへの変化は、時に寂しくもあります。ありがちなのが、店オリジナルグッズの廃止。王城も1つだけですが、看板が変わっていたので心配していましたが、大丈夫でした。
まずは、紙ナプキン。イチゴ模様のマグカップから出てきた。少し線が細くなりましたが、シンプル・イズ・ベストな「王城」。
最大限のリスペクトを払い、「王城」を避けて口を拭いたのは言うまでもない。
今でこそオウジョウと読めるけど、最初は「玉城(タマシロ)」だと思い込んでいました。私だけかな?
当然、伝票も王城。
けど、まだまだ油断は禁物。問題はマッチ。昔は作ったけど、今は作っていない店が増えています。禁煙ブームに加え、コストが結構かかるそうです。王城も前はテンコ盛りでレジ脇にあったけど…
おそるおそるレジ脇を確認すると、はたして!?
ありました!!!
神殿風の絵柄の入ったもので、時代を感じる「憩の殿堂」というコピー。
「マッチを頂いてもよろしいですか?」と訊いたところ、それまで固い表情だった店員さんがニコッと笑って、「どうぞ」と言ってくれた。そして、「謝恩金券(50円)」も貰った。
有効期限が空白だったので、いつか使おう。
最後に、消えた紫の看板の写真をここに残しておきます。
黄色の矢印で、妖しく店内へ誘ってくれたんですが…。
もう見ることはできないのですね(未練たっぷり)。
珈琲 王城 マッチ (2013年)
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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