大和八木には、どうしても行っておきたい純喫茶があった。
その店はこちら。近鉄八木駅名店街にある「純喫茶 ヒュッテ」。
奈良県橿原市内膳町5-1-14
閉店
ヒュッテはドイツ語由来で山小屋を意味。
名は体を表す。外観から、いかにも山小屋風だ。
入店前に写真を撮らないという掟を自ら課しているものの、懲りず何度もそれを破ってしまう。これはもう性だな。
「ホット?」
入った途端、席に着く間もなくマダムからそう聞かれた。
第一声が「ホット?」の問いかけは、これまでも数々の喫茶店で経験あるが、要はホットコーヒーにして欲しいという意味だ。もっと突き詰めると、ホットコーヒー以外できない(笑)。
入ることそのものが目的なので、それ自体は問題なし。
とはいえ、何を注文をするか迷う余地も欲しい。喫茶店巡りの楽しみの一つでもある。埋め込まれたショーケースにデザート的なサンプルもあったので、もしやの期待もあり、メニューはあるのか聞いてみた。
ところがマダムは耳が遠いようで、まったく話が進まない。当初のお勧めに従い(というか、根負けし)、ホットコーヒーをお願いする。
お冷は山の湧き水のイメージを大切にしているのか透き通って美味しかった。コーヒーはやや酸味系。少し苦手。
テーブルは木の切り株。丸太を組み合わせたカウンターに、帽子をかぶった木彫り人形みたいなスツール。店内には木が生えている。
マダムは90歳代らしい。それにしては高齢の店主にありがちな目を覆いたくなるばかりの“私物置き場”もなく、手入れが行き届いていて、コンパクトながら完成度の高い山小屋空間だった。どなたか身内の方のお手伝いがあるのかしら?
ただ本来お目当てにすべきその見事な山小屋ぶりは、ああ素敵だなとは思うものの、そこまで琴線に触れなかった。
それよりグッときたのは、商店街と店内を隔てる境い目。
食品サンプルケースを兼ねる一枚のすりガラス越しに、食品サンプルや人影がうっすら見え、その儚い切なさにノスタルジックなときめきを感じた。
近鉄八木駅名店街は高架下になっており、その上を近鉄の電車が走る。人通りもあり、賑やかな商店街だった。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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