湯浅の街並みは情緒があった。
焦げ茶色の木造建築が整然と並び、歴史がありそう。それも昭和とかじゃなくて、何100年、それとも1000年? 少なくとも純喫茶が誕生するよりも遥か昔。
元来私は古都の散策にはあまり積極的ではないが、湯浅の美しく保存された町並みには引き込まれてしまった。何度も予定外のわき道にそれてしまい、細い道を何度か曲がるうちに、自分が今どこに居るのか分からなくなってしまった。まるで迷路。
そんな伝統ある純日本的な街並みに忽然と現れるのが「喫茶 キセイ」。晴れた青空を背景に、大きな白い洋風建築のコントラストが見事。中心に据えた円筒形がまるで灯台みたい。
和歌山県有田郡湯浅町湯浅754
隣が瓦屋根のいかにも純和風な日本家屋なので、そのギャップが面白い。名手の「サンスイ」もだけど、和歌山にはこういう外観の喫茶店が多い気がする。
看板も無駄に背が高い。どちらかというと国道沿いにあるドライブインタイプ。
でもって、店内も期待裏切らずの大箱ゴージャスぶり。
なんだって和歌山にはやたら大物が多いんだろうか?
この1つでもしょぼい県に分けてやれば、全国の純喫茶格差が是正され良いバランスになるのに。心からそう思う。
天井が無駄に高くて、店内無駄に広い。しかし純喫茶というものは効率化とは相性が悪く、無駄が多ければ多いほど格が上がっていく。
窓の上の半円とランプシェードはステンドグラスになっていて、モチーフに統一性がないので、もしかしたらお店の人の自作なのかも?と思い、マダムに聞いてみると、10数年かけて全部作ったのだという。
さらに店内には池があり、そこには…
キセイ!
凄い! これはこの喫茶キセイのミニチュア。
こちらは亡くなったご主人が作ったもので(凄い!凄い!)、興味津々で見ていたら電気をつけてくれた。
前日営業確認のために電話をかけたところ、「大したことないで~」とマダムは言ってたが、どこが! 池に自身の店の形のライトがある店なんて大変素晴らしい。
パーテーション代わりにもなっている水槽などもあり、純喫茶黄金期がそのまま残るゴージャスな空間だった。
電話室があり、中はファンシーなピンクの壁。
シャンデリアの電気が消えてたり、奥の席が薄暗かったり、どこか半現役を退いた感もあるけども、そこが良い意味で退廃感を醸し出していた。かなりユルい雰囲気で、そういう意味でも寂れマニアにはたまらない魅力があった。
関西の喫茶店では注文率高いミックスジュース。
テーブルには紀陽銀行のマッチ。
こういうローカル金融機関のグッズを見ると、妙にテンションが上がってしまう。ところで紀陽銀行ってまだあるのかしら?
中身はギッシリ。お客さんがタバコ吸うときに使うんでしょうね?
だけどこれを置いているということは……(表情が曇る)?
と言いつつあっさり期待を裏切る。マッチをいただいた(歓喜)。お店の外観を絵にした素敵過ぎるマッチ!
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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コメント
SHIHO
超地元なのに最近帰省した時に発見して、すごく中が気になってたお店だったもので…(^◇^;)
(キセイと帰省、かけてないですよ…笑)
店名の由来はおそらく紀勢本線からきてるのかな?と勝手に考えてました☆
無駄に大きくて広くて幅をとる…和歌山の喫茶店たち。ず〜っと残っていてもらいたいです☆
ちなみに紀陽銀行はバリバリ現役です(*^^*) 子供の頃から、銀行といえば紀陽銀行でした(笑)
2017/08/18 URL 編集
エムケイ
最近発見されたのですね。
>キセイと帰省
いい感じです(笑)。おそらく書かれている通り店名の由来は紀勢本線だと思いますが、カタカナで書くということは、もしかしたら帰省の意味も含めたダブルミーニングの可能性もあったりして?
無駄に広い店が和歌山には極端に多い気がします。
紀陽銀行はバリバリですか!
マッチ箱が微妙に古びていたので、もしや昔のマッチでもうないのかと思ってました。
2017/08/21 URL 編集