岡山の至宝とも呼ぶべき純喫茶をご案内する。
その名も「東京」。
岡山では5軒の純喫茶に入ったが、すべてが珠玉だった。だが、この「東京」は珠玉のさらに上、超一級品である。
岡山県岡山市北区田町1-13-15
※2015年4月30日閉店
もちろん純喫茶ファンなら迷わず入るべし。だが、同時に純喫茶に興味のないカフェ好きさんにもお勧めしたい。
以前から思っていたが、カフェ好きの方も自覚がないだけで実は純喫茶が好きなんじゃないかと。要はキッカケなのだ。超一級品に触れ、純喫茶の魅力に開眼して欲しい。
そこで、「東京」。
純喫茶の店名は直球で単純なのが人気(?)とはいえ、東京って…(笑)。インパク大。思わずニヤけてしまう。
とはいえ、決して受け狙いではない、由緒正しき昭和33年(1958年)創業の老舗純喫茶なのだ。
岡山駅前から路面電車に乗り、「田町」電停にて下車。徒歩1分程度。
お約束のスモーク扉には、ビクターのロゴ。純然たる名曲喫茶である。
まず目にとまるのは、大きなビクター犬の置物。そして、大きなシャンデリア。2階から1階に向かって垂れ下がり迫力がある。と言いたいところだが、下から見上げるとずんぐりしてるだけで、いまいちその大きさが実感できないというか><
新幹線が岡山に着くなり、まっさきに向かったので2階はclosed。
レジには高齢の男性がビクター犬と一緒に仲良く置物のように座っていたが、その方とは別のもっと齢若のマスターより、「お好きな席へどうぞ」と声をかけられた。
私が一番ノリらしく、席は選びたい放題。1階席だけでもかなり広い。
この写真では1枚に情報を目一杯詰め込んでいるので分かりにくいが、「新聞 週刊誌」「化粧室」を示す案内板は灯りがついている。これが私的にはかなりのツボ。
名曲喫茶の要ともいうべき、凄い音響機器。こちらにも小さなビクター犬が鎮座。
いっそ店名も東京ではなくてビクターでよいのでは? そのくらいビクター・リスペクトな喫茶店である。
テーブルごとにメニューは設置。お手製らしいが、かなり作りこんだ洗練されたデザイン。名曲喫茶らしく背景色は重々しい黒。
名曲喫茶では、コーヒー中心の絞り込んだメニューが一般的だが、こちらは種類豊富。ホットケーキも!?(自家製の表記はないもの、写真の焼き色は綺麗)
「今のお時間ですと、プラス100円でトーストとサラダが付けられます」大変丁寧で物腰柔らかなマスターより説明された。
モーニングあり! これは嬉しい!
ただ残念なのは、さすがに岡山まで我慢できず、東京駅の売店で買った意味なく高いサンドウィッチを新幹線の中で食べてしまったこと。ああ、知ってたら、飢餓状態でここにのぞんだのに。
アイスコーヒー単品。
苦いアイスコーヒーを飲みながら、ゆったりしたソファに身を任せた。
モーツァルト? ベートーヴェン? どこかで聴いたことのあるような、有名なピアノ協奏曲が店内を包み込む。スーッと意識が現実から遠のいた。
厳かな威圧感、歴史の重みを感じる。なんだか感動で泣きそうになった。このままここに溶けてしまいたい。
2日間滞在した岡山でここまでの気持ちになれたのは、この東京だけだった。
放っておけば何時間でもこのままドップリこの名曲空間に漬かっていたことだろう。
ところが、いつでも現実は向こうから突然やってくる。
「ああ~ら、ここ随分と懐かしいじゃないの」
スーツケースをガラガラ引っ張ったご婦人方が、元気に喋りながら入店。旅行者? タイミングの良いこと!
これは天啓に違いない。先へ行け!というお告げなんだと解釈し、お会計。ただ、心残りは2階。そう易々と再訪問はできない。今しかない! 図々しくも2階を見せてもらえるようお願いした。
「どうぞ自由に見て行ってください」とありがたきお言葉に甘え、階段を上った。
1階席はただひたすらにクラシカルな空間なのに対し、2階席は明るく少しだけ現代風。窓辺には外が見れるカウンター席もあった。
またもや凄そうなスピーカー。ビクターFFシリーズとのこと。ショップカードに「歴史あるビクターLCB-2スピーカーは今でも現役活躍中」と書かれていた。
かなり貴重なスピーカーらしく、毎月第一土曜日にはLPレコード鑑賞会を開催。
おおっ!!! なんて昭和テイストな看板。昔使っていたのだろうか?
やはり気になるのはシャンデリア。
絶対に下から見上げるより、上から見下ろした方が迫力があるし、美しさが引き立つ。
何枚撮ったら気が済むんだ(笑)。わざわざ回り込んで、別角度からも。
煌々と輝くシャンデリア。かなり古いはずだが、電球の欠けがなく完璧に灯っているのは、手入れをしっかりしている証拠。
これはシャンデリアに限ったことでなく、店全体にも言えること。内装、調度品、メニューに至るまで、メンテナンスが完璧。掃除も行き届いており、清潔感もある。純喫茶に理解のある一部の愛好家だけでなく、幅広い客層に気持ち良く過ごしてもらいたいという、おもてなしの心なのだと思う。
大変上質な空間であり、超一級品の純喫茶である。純喫茶ファンの方もそうでない方も、岡山に行ったら、必ず東京に行くべし。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
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