喫茶店の食事は、そこそこだと思っていた。
すごく不味くもなければ、飛び抜けて美味しいわけでもない。でも、喫茶店というのは、そういうものではないかと。
ただ、純喫茶巡りを続けていくと、真面目に味を追求し続ける店にたまに出会う。
たとえば、亀有の「ニュー幌馬車」。
東京都葛飾区亀有3-18-6
※2016年10月閉店
前々から言ってるけど、ニューが付く店ほど古い。ニューには昭和の匂いがする。小田原駅前に「ニューマロン」という名の喫茶店があったが、改装を機に「マロン」に改名してしまった。法則を知ったからに違いない(笑)。ニューと一緒に昭和を捨てたのだ。
徐々に昭和の遺産となりつつある、ニュー。
『幌馬車』の由来は映画? たしか、西部劇だった記憶が。
ここは駅から至近距離にも関わらず、わき道にあり、人通りは少ない。
静まり返った闇夜に灯る、看板、食品サンプルケース。
綺麗でピカピカなSINCE1957。
琥珀色のランプが放つ輝きが、夜に映えて美しい。
店内中ほどに着席。先客はなし。
ここで一呼吸おき、メニュー。
「素材にこだわり、レトルト食品を使用していないので、提供までに時間がかかり、品切れな場合もあります」
「パフェは、乳脂肪分47%の生クリーム使用」等、生真面目な説明。他にも、烏龍茶の茶葉に関する説明もあった。
かなり本気。
壁に掛かっていた大きなプリンの写真に心動く。けど、急にチーズトーストが食べたくなった。
※2014年4月消費税率改正前訪問。
チーズトーストだけでも、バラエティー豊か。オニオンサラミチーズトーストを注文。
凄くお腹が空いてて、あっという間に、半分ほど食べてしまい、はたと気付いた。
サラミが入っていない?
これ、オニオンチーズトーストでは?
……注文間違えたのだろうか。
伝票は530円になっていた。オニオンサラミチーズトーストでも、オニオンチーズトーストでもなく、一番安い基本のチーズトーストの値段だった。
だが、すごく美味しかったのは事実。特に印象に残ったのは、上に乗ったオニオンスライス。シャキシャキしつつ、甘みもあり、柔らかい。当然、下のチーズやパンもだが、玉ねぎやけに美味しかった。普段、玉ねぎの美味しさを意識しないのだが。
コーヒーも美味しい。スッキリした味から察するに、サイフォン。
マスターは、喫茶店のマスターというより、料理人に見えた。多分、着ていた服がコックさんみたいだったからだ。
話をするまでは、こわそうにも見えた。
ピンポイントすぎて、褒め言葉としては微妙かと思ったが、チーズトーストの玉ねぎがすごく美味しかった、と正直に伝えた。マスターの顔が笑顔になった。
家では包丁をきちんと研いでいるか聞かれ、ああそういえば最近切れ味が悪くなった、と答えると、はははと笑われてしまった。結局、玉ねぎの美味しさについては、明快な答えは得られず。とりあえず、家の包丁をそろそろ研ごう、と思った。
ただし、「レトルトは使わない」。この件に関しては、はっきりと言い切った。だから、「出すのに時間がかかることもある」と。
あんみつは団体で注文されると、提供までに時間がかかる。寒天を切るところから始めるのだという。ピザやホットケーキは以前出していたが、今はない。できること、できないこと。やるならきちんと真面目に。中途半端なら、やらない。メニューからも生真面目さ・真摯さが痛いほどストレートに伝わってきた。
「…ですが、食べる側は美味しい、美味しくない、でいいんですよ。次は気軽に来てくださいね」と言ってくれた。
よーし! 次はプリンかパフェを食べに来よう。
ニュー幌馬車 マッチ (2014年)
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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