横浜市の弘明寺という駅に初めて下車しました。先月金沢八景に向かう途中、京急で通過したので名前だけは存じあげております。弘明寺というと、お寺があるのだろうか?余裕があればそのうち行こうか、みたいな。
でも、そんな悠長なこと言ってられなくなりました。外観にインパクトのある、「喫茶 モカ」という古くて渋い純喫茶が弘明寺駅前にある、との情報を頂いたのです。
神奈川県横浜市南区大岡2-32-4
念のために断っておくと、弘明寺駅前ではありますが、京急ではなく、横浜市営地下鉄ブルーラインの駅前。
京急とはかなり距離があるようです。
…ようです、と他人事のように書くのは、残念ながら、駅周辺の散策を一切してないからなのです。駅前の鎌倉街道の向こう側には魅力的なレトロな建物、かなり立派な風格ある商店街の入り口も見えたので、惜しいことしてます。
というのも、このところ事情があって、まとまった時間をとって純喫茶めぐりができるのが約1ヶ月ぶり。この日を決めて、綿密にプランを練っていたからです。
横浜市、鎌倉市、横須賀市と3市にかけて行きたい店をリストアップしていて、1日で行けるだけ行く予定でした。しかも連日の猛暑。下手に歩き回ると熱中症でダウンするのがこわくて。極力省エネモードで動くことに。
そんな貴重な1日。まず第1店目、午前中に伺ったのが「喫茶モカ」。ええ、はっきり言います。この日の大本命です。正直不安もありました。お盆休みの初日だったので、休みかもしれない~~
でも、インパクトある外観だというし、やってなくてもいいや、外観だけでも拝んでおこうとダメもとで来てみたら、あっさり営業中。
流れるようなモカの字体がなんともレトロ。
ペプシコーラの黄色い看板が目を惹きます。
持ち歩きたいくらい可愛い。こんなキーホルダーあったら即買いです!
うっかり見落としてしまいそうな細長い食品サンプルケース。商店街の庇から漏れる太陽の光が緑色で、どこか幻想的。
思い切って丸いドアノブを手に中へ。
創業56年になる店内は外観に負けず劣らずレトロ。お店を始めたのは、6ヶ月になる息子さんが奥様のお腹にいるときだった、とのこと。
何年経ったのか忘れたときは、息子さんに年齢を聞くそうです。
現在のお客さんのほとんどは昔からの常連さんで、毎日のように来るお客さんがいるから営業している、と言っていました。
壁に掛かっている絵は全部お客さんが持ってきたもの。
テレビの真下のテーブルクロスの下がゲーム機っぽかったので、「この下見せてもらってもいいですか?」と図々しくお願いすると、
「これインベーダーゲームだけど、もう使えないんだよね」
ぺロッとビニールクロスをめくってくれた上、電源を入れてくれました。
言う通り、ディスプレーには何も表示せず、音だけ空しくビュンビュン響いていました。
「使えれば無料で遊んでもらってもいいんだけどね」
タダって!!! 商売っ気はないのかしら?
うーん。なさそう…。コーヒー300円、ナポリタン450円。値上げをしている気配はさっぱりない。
椅子とテーブルがレトロすぎる。特にパイプ椅子が可愛い。
「すごいいいです。すごいいいです」と連発していたら、
「経費節減でね。昔のまま変えてない」とかみ合わない返事が。
そうなんです。ここに限らず、純喫茶の店主はみんなそう。こちらは昔ながらの素朴なチープ感にドキドキときめいてるのに、向こうは向こうでまったく意図していない。その温度差が面白い。
「跡継ぎがいないから改装もできなくてね。こんな内装いまどきないでしょ?跡継ぎがいたら今風にしていたと思う」
うーむ。ここでも温度差が。今風にするとはなんたること!
レトロな内装を守る、という狙いは一切なく、仕方なしに、といったニュアンス。
でも、この無頓着ぶりが魅力でもあるんですけどね。
マスターは「なぜこんな古い店を?」「変わってるねぇ」と何度も繰り返してましたが、ソコがソレ。当の私自身もよく分からない。なんでだろうね?
「もう今日はお客は来ないから…」とマスターがカウンターから出てきました。
「こういう仕事続けてると色々あってねぇ…」と、最後に1つ、不思議な話をしてくれました。お店に関するエピソードで、どこか謎めいて小説みたいでした。
後で知ったのですが、駅名にもなっている弘明寺は横浜最古のお寺なんだそう。商店街は鎌倉街道からその入り口が見えますが、京急の駅まで長く続いています。
門前町、第二次大戦後の歓楽街・闇市、市電の発着駅として発展してきたという華やかな歴史もあり、大変魅力的です。
今度は時間を作って、弘明寺をじっくり散策したいです。
そのときには、ここにまた寄りたいな。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
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