覚えているだろうか?
昨年秋、茨城県日立市に行ったことを。そして、王道のゴージャス純喫茶ウィーンを訪問したことを。
実はあの後、日立駅に戻る途中、もう1軒の純喫茶に寄った。
茨城県日立市弁天町1-2-15
※閉店
場所は平和通り。細長い2階建ての「珈琲の店 理理 (リリー)」。
Rの付いた窓辺とか、2階の格子とか。外観に魅かれる要素あり。
ウィーンに向かう途中にあった。
ただ、この日は大雨。荒れた天気のせいで、ウィーンが臨時で早じまいする恐れも…。とにかく先を急いだ。
心配は杞憂に終わった。純喫茶ウィーンは無事営業中。長年の憧れを裏切らず素晴らしかった。かなり長時間滞在してしまい、雨はすっかりやんだ。日立に来る機会はそうはない。気分的にもお腹にも余裕ができ、駅に戻りがてら、理理にも入ることに。
ドアを開けるとカウンター。その奥が客席になっているようだが、まずは2階へ続く階段が目にとまった。外から見た2階窓辺の印象が素敵だったので、2階へ行ってもいいか?とママに聞くと、「現在は2階は使っていない」とのこと。
残念だが仕方ない。カウンターの奥のテーブルに座ることに。
それほど広くはないが、外から見た印象ほど狭くはなく、テーブルが5つ位はあっただろうか? 壁はセピア色、同系色で大きな傘のライトがいくつか吊ってあり、統一感のあるザ・純喫茶な内装。
純喫茶ウィーン同様、店内にはクラシック音楽が流れていた。そこそこ迫力ある音量だったので、ママの趣味もあるかもしれないが。
なんの気なしにウィンナーコーヒーを注文したら、美しい薔薇を描いた素敵なカップとソーサーで登場。スプーンの柄は貝殻を模しているのか、洒落ていた。
もしかして、薔薇をかたどっている?
ちょうどこの時期、倉敷市の「西洋乞食」という喫茶店に行こうと画策してるところだった。名物は、幻想的な青いソーダ水に、大輪の薔薇のクリームを浮かべたクリームソーダ。いつ倉敷行こうかな…。
そんなことを考えながら、少しずつ薔薇を崩して、コーヒーを飲んだ。
先客もなく、この後もお客はなく、お客は終始私ひとりだった。迫力のクラシック音楽に混じって、背後から紙をパラパラめくる音がする。振り返ると、椅子に座ってママが新聞を読んでいた。
なんとはなしに、気づまりな雰囲気になり、そそくさとコーヒーを飲みほし、急いでお会計。
今思えば、渋く素敵な内装だったが、その時は私の勢いが今一歩足りず、店内の写真を撮らせてもらうには至らなかった。
あれから半年。再び日立。目的は純喫茶ウィーンの再訪問。
ちょうど「日立さくらまつり」。
ウィーンに向かう平和通りは桜並木になっており、見頃。いや、正確に言うと、盛を少しだけ過ぎていた。1週間前だったら、満開できれいだったに違いない。
すでに花びらがハラハラと散っている。風が吹くと、地面に落ちた花びらがふわりと舞い上がった。
花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに小野小町(9番) 『古今集』春・113
本来は容色の衰えを嘆く女の歌なのだが、散りゆく桜を見て、ふとこの歌を思い出した。
途中、理理。
今日は休みだろうか、と何気なく近寄ると、
テナント募集。
隣のショーウィンドーを覗くと、中は空っぽ。
半年も経てば状況は変わってしまう。そういえば、ウィンドーには、もともと何が入っていたっけ? 記憶を手繰れど思い出せず。
春は出会いもあるが、別れの季節でもある。閉店は残念だが、できることは、大好きな店に一回でも多く足を運ぶことだけだ。
純喫茶ウィーンに向かった。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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コメント
ヒロ
2018/06/29 URL 編集
エムケイ
こちらは桜並木の沿道でしたね。
私も一度目は入れましたが、2度目は閉店してて入れませんでした。
「お客さんは絶対に入れちゃ駄目」という2階!
ああ、どんなだったんでしょうか?
客席ではなく、お店の方の自宅だったんでしょうか? それとも特別の貸切用スペースとか?
少し後悔してるのは、なんとなく気後れして店内の写真を撮れなかったことです。
素敵な空間だったんですけどね。
でも撮れなかったからこそ、記憶にはしっかりと残っているのでした。
2018/07/03 URL 編集