ここだけは何がなんでも行っておかなきゃ。
日本各地で同時多発的に珠玉の純喫茶が閉店する。そんなXデーが来るとする。でもこれまで純喫茶好きだったご褒美に1軒だけ訪問を許されるとしたら?
山口県防府市にある「純喫茶 エトワル」を選びたい。
山口県防府市天神1-3-6
なにそのあり得ない妄想?
ほとんどの人がこれ聞いたら鼻で笑うに違いないが、純喫茶好きの方ならどうだろう。胸に手を当てて欲しい。その場に立ったら、「絶対ここ!」という1軒が必ずあるはず。
現在ではリアルタイムの情報網が発達しているので、有名店の場合閉店の告知をすれば、瞬く間に情報が伝わる時代ではあるけど、それでも予告なしの閉店はこれまで数えられないほど経験している。だから遠くとも、憧れの純喫茶には、無理してでも行かねばという思いがあった。
で、ついに来てしまった。
滑らかで美しい曲線に純喫茶エトワルの店名。
同行者曰く、「こんな風に曲線にするなんて、頭おかしいよね」
その発想はなかった! たしかに、この辺を適当に平らにした方が作るときも楽だろうし、何といってもお金もかからなそう。そう考えると、この曲線は店主のこだわりの一端とも言える。
入口には句碑がある。
1階があって、すぐ2階への階段を上る。お店の人に「お2階へどうぞ」と言われたのか、自分から勝手にずんずん上ったのか、舞い上がっちゃてて全然覚えてないけど。
嗚呼! ここで私は一気に夢見る少女に戻ってしまった。
では、ここからは昭和モダンな乙女空間をとくとご覧あれ。
あれは!?
東郷青児の絵。
他にも!
画廊喫茶というわけでもないのに、壁にはさまざまな絵画が飾られており、それらが特別主張するでなく、センス良く全体に溶け込んでいるのだった。
東郷青児なんて、もっと前面に押し出しても良さそうなものだが、気付く人にだけ気付いてもらえたらという控えめな態度でそこにあるのだから、自分だけの宝物を見付けた気分。
でも主役は、殻を剥いたばかりのゆで卵みたいにツルンとした椅子(笑)。
エトワル=この椅子。エトワルのアイデンティティーといっても大げさじゃないかも。
天辺がツンとし、丸っこいのにスリムなフォルムが美しい。表面は磨いたように艶々と輝きを放っているのだった。
この完成形ともいえる、楚々とし凛とした椅子が広々した店内を埋め尽くしている。
いつでもお客さんがいっぱいの店だと聞いてたので覚悟してたけど、なんとこの時は貸切状態!
お客さんがいないことを喜ぶなんてお店の人からしたら全く有難くない客で申し訳ないけども、どこでも座り放題。
多分こんな機会は一生に一度に違いない。やりましたよ。何回も席替えをして、一番良い席を選ぶという作業を。
試行錯誤した結果、窓際に近い、でも窓際ではないけど窓側を眺められ、かつぐるりと360度見まわせるという真ん中付近の席を選んだ。
さっきタマゴの椅子と書いたけども、窓際だけは形が違ってぽっちゃりしている。どっちの方が座り心地が良いか座り比べもしたり(←とんでもない客だ)。
これが甲乙つけがたい。見た目もとんでもなくキュート&清楚なのだが、どちらも体にしっくり馴染む。包容力があるのだった。
エトワルは夜遅くまで(23時まで)営業しているが、仕事帰りのお客さんの自宅に帰るまでのひと時をこの椅子でこれまで癒し続けたのだろう。
自家焙煎のコーヒーを始めとして、フード系に至るまで名物メニューがたくさんあり迷うのだけど、「エトワルに行ったらこれ!」と決めたのがあって、それがこのストロベリーパフェ。
季節ものなのでいつでもあるわけではないので、その意味でも絶対!
お値段は850円とけして安くはないのだけど、食べてみてそんなの全部吹き飛ぶほどの美味しさ!
イチゴが瑞々しいの! 熟して甘いのにシャキシャキしてて、スパーンと綺麗な断面。
そしてそれに絡まる生クリームとアイスクリーム。甘さ控えめで、けどミルク感はしっかりあり、イチゴとの相性は抜群。
喫茶店のパフェでありがちなかさ増しのコーンフレーク、そんなものは当然なし。赤と白のコントラスト織りなすハーモニー。
もちろんソース部分も濃厚なイチゴのお味が凝縮している。これも生のイチゴで作ったのよね、きっと。
パフェグラスの下には、こんな素敵な紙ナプキンも!
汚してしまわないように、食べる前にそっと抜き取る。そして水滴を乾かす。忘れず持って帰る。
同行者はホットケーキセットを頼んだ。
ホットケーキもエトワルの人気メニュー。一切れ食べさせてもらった。たしかに美味しい。でもストロベリーパフェのおいしさには敵わない。
伝票は当然オリジナル。
自家焙煎60年という記述があるけど、昭和26年(1951年)創業なので、現在では65年以上。さすがにこれ以上古い店は防府にはないはず。
ひっくり返すとメニューがずらりと並ぶチェック式。
嗚呼! 全制覇したくなる。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
当ブログはリンクフリーです。トップページ、個別ページでもご自由に。
コメント
norakuro
写真も素敵です。
2017/06/21 URL 編集
紅茶っちゃ
2017/06/21 URL 編集
あかりのママ
やまぐちでいかれたきっさはすべてアップされるとのこと、楽しみに待っています。
2017/06/21 URL 編集
みこと
とても美味しそうです!
2017/06/21 URL 編集
エムケイ
どこの場所を切り取っても素敵なので、適当に撮っても良い写真になります。
2017/06/22 URL 編集
エムケイ
調べてみたら、ザクザクと防府のB面情報が!
本町というのは三田尻本町のことでしょうか?
地図に萩往環という通りがありました。
この辺の町名を眺めていると、深読みしてしまいそうな名前がありますね。お茶屋町など。
>「純喫茶ではない」テキサス
気になりますね。もし次行く機会があるのなら、こちらも歩いてみたいです。
>昭和のストリッパー、ジプシーローズ
こちらも知りませんでした><
2017/06/22 URL 編集
エムケイ
山口で行った喫茶は何らかの形で全アップします。
残しておきたいのですね。
2017/06/22 URL 編集
エムケイ
落ち着くだけでなく、ときめきます。
こんなに鮮度抜群のいちごパフェは初めてでした。
2017/06/22 URL 編集